BEATLESのアナログ盤

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ABBEY ROAD


1969926日。ビートルズの12枚めのオリジナル・アルバム『アビイ・ロード』が 英国でリリースされました。
このアルバムを聴いた世界中の人たちは、当時どんなふうに感じたのでしょうか。ビートルズが解散することの予兆をこのアルバムに 感じ取ったのでしょうか。
ぼくはまだ、そういうことがわかりませんでした。またまたすげえアルバムを作ったもんだ、とひたすら感動しました。

まずシングル・カットされた「カム・トゥゲザー」と「サムシング」、この2曲の素晴らしさに打たれました。
当時はストーンズ派だったぼくですが、「カム・トゥゲザー」の斬新さはほかのだれにもマネできないものに思え、 ロックを新しく切り拓いていくのはやっぱりビートルズなんだと改めて強く思ったものです。
サムシング」の美しさはいうまでもありませんでした。

アルバム単位でみると、B面の完成度の高さは、「ロック・アルバム」というものの本質的な意味をもう一度考えさせるに十分なものでしたが、 ぼくはA面の最後に置かれた「I Want You」がとても重要な働きをしているように思えました。
この曲のノイズを含んだ唐突な終わり方はすごく衝撃的で、胸騒ぎを覚えながらレコードをひっくり返すと 「ヒア・カムズ・ザ・サン」の軽やかなイントロが始まり、あとは気がつけば「The End」までノン・ストップです。
つまりB面のメドレーは実は「I Want You」から始まっているのではないか、そんな印象を覚えました。
最後に置かれた「The End」という曲のタイトルの意味を理解するのもずっと後のことでしたね。

では、いつものようにUKオリジナル盤からご覧ください。
レコード番号はPCS 7088で、このアルバムからモノラル盤がなくなりました。




アビイ・ロードにあるEMIスタジオの前の横断歩道を横切るショットは、 おそらく世界で最も有名なアルバム・ジャケットではないでしょうか。
撮影はイアン・マクミラン
考えてみればここからポール死亡説が始まったんでしたね(笑)。
いわく、ポールは実はもう3年近くも前に交通事故で亡くなっていて、ジャケットに映っているのは替え玉だ。
残りの3人は、替え玉をポールに仕立て上げながらなんとか活動を続けてきたが、いろいろなところで少しずつ秘密をファンに暴露している。
アビー・ロードのジャケットはそのいい例で、

  • ジョンが白いスーツを着ているのは牧師、リンゴが黒いスーツを着ているのは葬儀屋、 ポールが裸足なのは死者、ジョージがデニムの上下なのは墓堀人夫を表している。

  • その証拠に左利きのはずのポールが右手にタバコを持っている。

  • バックに映っているVWビートルのライセンス・プレートの28IFは、 ポールがもし今生きていれば28歳になることを表している。

  • 裏ジャケットの「BEATLES」の「S」にひびが入っている。

  • カム・トゥゲザー」でジョンは「One and one and one is three」と唄っている。

なんて、まことしやかな噂が流れましたね。(カラー文字の部分をクリックすると関連の画像が開きます)

ついでにもうちょっと付け加えておくと、ポールがなくなったのは1966年11月9日水曜日の早朝、乗っていたアストン・マーチンが 激突炎上したからだ、ということになっていました。
噂はアメリカの大学生の間で広まり始め、『サージェント・ペパーズ』関連では、

  • 表ジャケットは、花でベース・ギターをかたどった 墳墓である。

  • ポールの頭上に 開いた手が見えるが、東洋では死者の頭上に手をかざして神の祝福を願う風習がある。

  • 裏ジャケットで ポールだけが背を向けている

  • 内側の写真でポールは O.P.D.という腕章をつけているが、O.P.D.は「Officially Pronaunced Dead(公式死亡宣告済み)」を表している。

  • ポールが亡くなったのは水曜日の朝5時で、「She's Leaving Home」の歌詞はそれを表している。

  • Good Morning, Good Morning」の最初でジョンは「Nothing to do to save his life…」と唄っている。

  • A Day in the Life」には「He blew his mind out in a car」という歌詞が出てくる。

  • サージェント・ペパーズ〜」の最後に紹介されるビリー・シアーズがポールの替え玉である。

マジカル・ミステリー・ツアー』関係では、

  • 表ジャケットでポールだけが セイウチ(ウォルラス)のコスチュームをつけているが、北欧の文化圏ではセイウチは死の象徴である。

  • ジャケットをひっくり返すとBEATLESの文字が 537-1038と読めるが、水曜の朝5時にこの番号に電話するとビリー・シアーズと話すことができる。

  • 写真集の中でポールだけが 黒いカーネーションを胸に挿している。

  • アイ・アム・ザ・ウォルラス」の終わりにシェイクスピアの『リア王』のせりふが聞こえてくるが、 これは死の場面であり、「ああ、こんなに早く死のうとは…」と話している。

  • ストロベリーフィールズ・フォーエヴァー」の最後でジョンは「I buried Paul(ぼくはポールを埋葬した)」 と囁いている。

なんていうのがあって、とくに最後の噂を聞いたときは、家に飛んで帰って「ストロベリーフィールズ・フォーエヴァー」を聴いて、 「うわぁ、確かに言ってるよ! 怖いよ〜」なんて、びびったものでした。
まさか「クランベリー・ソース」って言ってるなんて……。

まだありますよ(笑)。『ホワイト・アルバム』では、

  • Glass Onion」でジョンは「Warlus is Paul」と唄っている。

  • I'm So Tired」の最後でジョンがぶつぶつとつぶやいているが、逆回転させると 「Turn me on, dead man.Paul is dead. Miss him. Miss him. Miss him」ということばになる。

まだまだ、たくさんあるんですが、これくらいにしておきます。
たしかにこのころビートルズの4人は人前に姿を見せなくなっていて、特に新婚のポールはスコットランドの農場で 半ば隠遁生活みたいになっていたそうですから、ポール死亡説はそれなりに真に迫るものがありましたね。
93年にリリースされたポールのライヴ・アルバムPAUL IS LIVEのタイトルとジャケットが、この死亡説のパロディになっているのは みなさんご承知のとおりです。

さて、レコードの話でした(笑)。
表裏ともラミネート・コーティングされたスリーヴはGarrod & Lofthouse社製で、一番下にそのクレジットがあります。
ここに載せたのはファースト・プレス、裏ジャケットのアップルのマークが左にずれている、 通称「レフト・アップル」と呼ばれるものです。



レーベルはダーク・グリーン・アップルで、Side-2に「Her Majesty」の表記がありません。
マトリクスはSide-1がYEX 749-2、Side-2がYEX 750-1、 マザー/スタンパー関係はSide-1が1 /LO、Side-2が3 /HAとなっています。




Yellow Parlophone Data Base でも書いているように、2004年版の英『RECORD COLLECTOR』誌のプライス・リストでは、 「Her Majesty」クレジットのないもの、および「レフト・アップル」についてはプレス・ミスの立場を取っており、 アップル・マークが左寄りではなく、「Her Majesty」の表記があってもファースト・プレスである、ということだそうです。


白いプレーンなインナーに収められています。インナーのクレジットは左下に「PATENTS APPLIED FOR」、 右下に「MADE IN GREAT BRITAIN」と書かれたものです。
国内アップル盤でおなじみのブラック・インナーと並行して、このホワイト・インナーもファースト・プレスから 使用されました。



つづいて3rdプレス?です。




ファースト・プレスとは微妙に色味が違っています。アップル・マークは上下のクレジットと揃っています。

またジャケットの貼り合わせ方が初盤とは異なっています。



ファースト・プレス(写真上)は表を折り返して裏と貼り合わせ、再発盤(写真下)は裏を折り返して表と貼り合わせています。
使われている紙も、ファースト・プレスはずいぶん薄く、再発盤でふつうの厚さになりました。
このことはpink islandさんからご教示いただきました。
レーベルのアップルはライト・グリーンになり、Side-2には「Her Majesty」のクレジットが記載されています。




マトリクス関係はSide-1がYEX 749-43 /HR、Side-2がYEX 750-2U7 /GDGとなっています。

やはり白いプレーンなインナーに収められていますが、左下のクレジットが「PATENTS APPLIED FOR」ではなく、 「PATENT No.1,125,555」になっています。特許が取れたんですね(笑)。



つづいてUSプレス。レコード番号はSO-383で、イギリスより1週間遅い69101日のリリースです。




表ジャケットはUK盤に比べると、やや赤みを帯びたものになっています。 写真が拡大されており、横断歩道の白いラインの一番右のものが見えなくなっています。
裏ジャケットではスリーヴ製作会社のクレジットの部分がありません。




レーベルはアップルですが、ぼくが持っているものは1stプレスではありません。
1stプレスのアップル・レーベルは、『イエロー・サブマリン』のところでご紹介した、 Side-2にキャピトルのロゴ・マークの入ったものです。
ここに掲載したものは71年以降にリリースされたものでしょう。
マトリクス関係はSide-1がSO-1-383-P14 #5、Side-2がSO-2-383-P14 #5となっています。
白無地のインナーがついています。

4枚目は国内盤・ファースト・プレスです。「丸帯」あるいは「ひょうたん帯」と呼ばれる帯がついています。
リリースは英国よりほぼ1か月遅い1021日で、帯の「全世界同時発売!!」というのは事実ではありません。 レコード番号はAP-8815




バック・カヴァーはレフト・アップルよりもっと有名なミス・プリント(笑)、Side-1の曲順、「Something」と 「Maxwell's Silver Hammer」が入れ替わっています。 このミス・プリントはずいぶんあとまで訂正されなかったような記憶があります。






レーベルはアップルで、エヴァークリーン・シリーズの赤盤、アップルの黒いインナーに収められています。

ところで、いわゆる「レフト・アップル」や国内盤の曲順違いのようなミス・プリントはどうして生じるのでしょうか。
写真のトリミングに違いがあって、レフト・アップルのほうが画像が拡大されていることは以前から指摘がありました。



ジャケット右上の建物からジャケット端までの距離や、右端の横断歩道の白いペイントの面積を見ればすぐにわかります。
左が「レフト・アップル」で右が通常盤です。

この点をふまえてdonjiさんという方がたまちさんのサイトで興味深い考察をされています。
長くなりますので、ごく簡単にdonjiさんの考察を要約すると、

アナログ印刷では、「写真原稿」と「版下」と呼ばれる文字原稿によって製版されるのですが、 写真と文字とがどのようにレイアウトされるかを示す「アタリ」と呼ばれるトレーシング・ペーパーが付属しています。
全世界同時発売をめざした英国EMIは、各国に「ジャケット製作見本」という完成品ではなく、「ジャケット製作素材」である 「写真原稿」と「版下」と「アタリ」とを配布したのではないか、というのです。
この「アタリ」の指示が曖昧だった?ために「レフト・アップル」のジャケットができてしまったのだが、 ヴィニール・コーティングという時間とコストのかかる製造方法だったので、そのまま出荷したのではないかということです。

アップルのマークと背景の塀のブロック、それに文字のレイアウトを比較してみましょう。



アップルのマークは「レフト・アップル」も通常盤も同じブロックの上に載っています。
アップルのマークが背景のブロックとずれているわけではありません。
つまりリンゴのマークだけが左に動いてるのではなく、写真全体が拡大されているためにリンゴからジャケット端までの 距離が短くなっているのです。
このことは上の「ABBEY ROAD」のプレートを見てもわかります。プレートもアップル・マークと同じだけ左にずれています。
ところが文字の位置は「版下」によって規定されますので、ジャケット端から文字までの距離は同じになっています。
結果的に文字行の先頭よりもリンゴのマークが左にずれてしまい、「レフト・アップル」が生まれたということです。

じつはこのレフト・アップル、UK初盤だけでなくオーストラリア盤でも見られるのですが、UK盤ほどずれてなくて「ちょいレフ」 になっています(笑)。やはり「アタリ」の指示が曖昧だったのでしょう。
AU盤の画像はたまちさんのサイトで見ることができますので、興味のある方は ここをクリックしてください。

国内盤の曲順ミスについては、「『版下』に日本語クレジットを追加する作業中に、 一度写植文字(版下に貼り込んである文字)がはがれて、元に戻したつもりが間違ったのかな」と推測されています。

donjiさんは印刷関係のお仕事だそうで、説得力のある考察ですよね。

つづいて7865日にリリースされたプロ・ユース・シリーズをご覧ください。
レコード番号はEALF-97001で、当時の定価は2,800円とやや高めの設定になっています。
専用の緑帯つき。




バック・カヴァーの曲順はまだ訂正されていません(ここまでくると怠慢)。

オーディオ評論家加藤しげきさんの解説によると、オーディオ機器の高性能化にともなって、さらによい音、高精度の音をめざしたもので、 「新たにトラックダウンしなおした76p/secの2トラック・マスター・テープからハーフ・スピード・カッティングされ」たもの と書かれています。
つぎに紹介するモービル・フィディリティ盤に先駆けて、高音質をめざしたものですね。

レーベルはアップルで、半透明のポリエチレン製のインナー入り、前述の加藤しげき氏のほかに吉成伸幸氏の解説、歌詞、 同じく吉成伸幸氏による対訳がついています。




最後はモービル盤です。
リリースは19809月で、レコード番号はMFSL 1-023、ビートルズのレコードとしては最初にリリースされた モービル盤です。




例によって、表裏とも一番上に黄色い帯状の部分があり、そこに「ORIGINAL MASTER RECORDING」と印刷されています。
裏ジャケットにはなんとアップル・マークがありません!
つまりマークの入ってない写真原稿をEMIから借り出したということですね。

イアン・マクミランのクレジットの下には、 「HALF-SPEED MASTERING BY STAN RICKER, JVC ・SUPER HIGH DEFINITION VINYL (WITH EXTENDED LIFE) ・IMPORTED PRESSING ・STATIC FREE INNER-SLEEVE ・SOURCE: THE ORIGINAL STEREO MASTER TAPE」と書かれていますが、リマスタリング・エンジニアの氏名が明記されているのは このアルバムだけではないかと思います。
キャピトル、EMI、モービル・フィディリティ・サウンド・ラボの3つのロゴマークがプリントされています。



レーベルはおなじみ白の上部にブラウンで「ORIGINAL MASTER RECORDING」と書かれたものです。
中央右側にはCapitolのロゴマーク入り。
レーベル下部には「PRESSED IN JAPAN」のクレジットがブラウンの文字で入っています。
レコードを保護する厚紙は内側に広告などの一切入っていない初期タイプで、 表には「SUPERDISCS SUPERTAPES SUPERSTARS SUPER QUALITY」「Positively Limited Editions-Limited Supplies」 そして 「……and you ain't heard nothing yet!」とたいへん挑戦的なキャッチ・コピーがプリントされています。




なお、音質評価についてはモービル・フィディリティ・サウンド・インプレッションに載せています。
併せてご覧ください。




special thanks to MASA, Mr.Hiropon, Mr.Tamachi,
Mr.pink island and especialy Mr.donji
© 2004 ryo parlophone




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