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THE CONCERT FOR BANGLA DESH


長い間廃盤になっていてファンからの要望も高かったジョージ・ハリスン&フレンズの 『コンサート・フォー・バングラデシュ』のCDとDVDがリニューアルされた。
今回は11月2日に東芝EMIからリリースされた映像版DVDのスペシャル・パッケージ(初回限定版)をご紹介しよう。
価格は8,900円で通常版DVDとの差は2,000円だが、2枚組のディスク自体はまったく同じもの。
どちらを購入するかはよく考えたほうがいいだろう(笑)。



11月13日のブログでも書いたが、 とても厚みのあるパッケージで、CDやDVDの収納に頭を悩ませているぼくとしては もう少しコンパクトなパッケージングでもよかったなと思う。
ただとても重厚な作りで高級感はある。
画像でお分かりいただけるかどうか心もとないが、表面はテクスチャー仕上げになっている。



スペシャル・パッケージのなかみを全部広げたところ。
たしかにたくさん入っている。



ひとつひとつ見ていこう。
まずポスターの復刻版だ。
六つ折でDVDのパッケージに入るのだからそんなに大きなものではない。



10枚組のポスト・カード。



ラヴィ・シャンカールやリオン・ラッセル、ボブ・ディランなど主要なゲストが映っている。

裏にはアップル・マークやクレジットなども記載されている。





アップルの鏡像になったステッカーと、ジョージが書いた「BANGLA DESH」の歌詞カードのコピー。



左はユニセフへの協力を呼びかけるリーフレット、右が60ページのカラー・ブックレットだ。



ブックレットはおもに映画のスティル写真で構成されている。



白いスーツに白い(フィニッシュを剥がしてナチュラルにした?)ストラトがかっこいい。



日本語の解説はブックレットの英文を訳したもので、歌詞も対訳もついていないのが残念だ。
歌詞を見たければCDを買えということなんだろう。

このうち、ポスター、ポスト・カード、ステッカー、手書きの歌詞カードなどがスペシャル・パッケージだけの特典で、 ブックレットも通常版は36ページとなっている。

つづいてディスクをご覧いただこう。



デジパックの内側には曼荼羅などに使われるような木の葉をモティーフにしたデザインが施されている。



レーベル。
Disc-1、Disc-2とも同じものが用いられている。
DVDの作成にもRHINOが関わっているようだ。



ボックスの内側にもバングラデシュの少年がデザインされていて、たいへん丁寧なりイシューになっている。

さて、こちらはレーザー・ディスク。
90年代にワーナー・ホーム・ビデオ(当時)から再発されたときのものだ。
4ページの解説書つき。



赤岩和美の解説のほかにみうら・じゅんのイラスト入りのエッセイがついていて、これが楽しかった。
このころからアイデンティティにこだわっていたのね(笑)。



それでは内容を見ていこう。
まず、Disc-1だが、リマスタリングの成果を比較してみたい。
下の画像は「マイ・スィート・ロード」が始まる直前のシーンを100インチのスクリーンに投射したもので、 もちろん同一条件で撮影している。
左がレーザー・ディスク(以下旧版と記す)、右がDVDである。




あまりの違いに愕然としてしまう。
まず、映像がたいへん鮮明になっている。
左端にジェシ・エド・デイヴィス(g)の後姿が映っているのだが、旧版ではそれがほとんど見えない。
ハイライトの部分は飛んでしまって暗部の情報が欠落しているのがわかる。
上のほうにある照明もほとんどは闇の中に溶けてしまっている。
旧版では全体に青味がかっていた色調もDVDではナチュラルになった。
アンプの前に立てかけてある、ギブソンのレス・ポールを見ていただきたい。
このギターはご存知のようにクラプトンがジョージにプレゼントしたもので、もともとは(おそらく)ゴールド・トップだったものを レッドにリフィニッシュしている。
それがDVDではきちんとわかるようになった。
さらに旧版ではトリミングされていたこともわかった。
右端のストラトを抱えてタバコを手にしたクラプトンの姿が、旧版ではほとんど切れてしまっている。

以下、ぼくなりのハイライト・シーンをご紹介していく。



最初に登場するのは、今やジョージのインド音楽の師というより、ノラ・ジョーンズのお父さん といったほうがわかりやすいかもしれない(笑)、世界的なシタール奏者ラヴィ・シャンカールだ。
映画のなかのMCでジョージもしゃべっているように、当時の聴衆にとってはほとんど未知の音楽だっただろう。
おそらくそれを意識して、ラヴィはジャズのインプロヴィゼイション的な要素の強い曲を選んでいると思われる。
たいへんスリリングでいつのまにか引き込まれてしまう魅力的な演奏だ。

つづいてジョージのオールスター・バンドの登場だ。
大ヒットした3枚組のアルバム『オール・シングス・マスト・パス』から「マイ・スウィート・ロード」や「Wah-Wah」、 ビートルズ時代の代表作「サムシング」や「ヒア・カムズ・ザ・サン」といった曲が演奏されるのに、当時はほんとうに興奮したものだ。

今になって思うと、ビートルズの解散後はじめてビートルズの曲を演奏したコンサートだったわけで (正確にはどうなのかわからないが、少なくともぼくにとっては)、そういう感激も当時としてはあったかもしれない。



さて、クラプトンである。
映像では余裕たっぷりのように見えるが、Disc-2のメイキングを見るとすごいプレッシャーで、直前まで参加するかどうか迷ったようだ。
なにしろドラッグとアルコールで引きこもりみたいな生活をしていたころである。
ぼくはこのドキュメンタリー映画を公開当時に見ているが、半分はクラプトン目当てだったのをはっきり覚えている(笑)。
Wah-Wah」ではサンバーストのストラト(おそらくブラウニーの愛称でクラプトンもお気に入りだったもの)で 曲名どおりワウを使い、「マイ・スウィート・ロード」ではスライドを決めているが、これは夜の部の映像だ。



「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」ではギブソンのバードランドというハムバッカー仕様の セミアコを弾いているが、こちらは昼の部の映像。
メイキングで「これは弾きにくかった」と語っているが、そんなことは弾く前からわかるでしょ?
せめてクリームのフェアウェル・コンサートで使ったES-335を持って来ればよかったのに、どうしちゃったんだろうね。
演奏はよれよれでクラプトンの当時の状態がよく現れている。

『バングラデシュ』の貴重なカットといえば、まずジェシ・エドの動く姿を見れることだろう。



ストーンズの『ロックンロール・サーカス』でもタジ・マハールのバンドでリード・ギターを弾く彼の姿を見ることができるが、 ここではブラウン・サンバーストのテレキャスを黙々と弾いている。
笑顔も素敵だ。
メイキングを見ると、クラプトンが来れなかったときのためにジョージがジェシを指名ておいたらしい。
それにしてもメンバー紹介のときの拍手の小ささが、いかに生前のジェシが過小評価されていたかを物語っていて複雑な気持ちになる。
とはいえ、ぼくも72年にこの映画を見たとき、ジェシのことなんか知らなかったもんなあ。

そしてバッド・フィンガーだ。



ここではドラムのマイク・ギボンズがパーカッション、残る3人はアコースティック・ギターを担当しているが、 スポット・ライトが当たるのはメンバー紹介のときぐらいなのがさびしい。
『レココレ』12月号を読むとディランが参加できなかったら代わりに演奏することになっていたらしい。

そんななかで唯一、ピート・ハムにスポットが当たるのが「ヒア・カムズ・ザ・サン」だ。



ニコリともせずにマーティンのD-28を弾くピートを初めて見たときは感動したものだ。
当時ぼくはひとりでこの曲を弾き語りしていたのだが、そうか、ギターは2人で弾けばいいんだ、と納得したことも懐かしい。

リンゴとジム・ケルトナーのツイン・ドラムというのも豪華な組み合わせだ。



おそらく初めてツイン・ドラムというものを見て、ふたりのスティック捌きがほんとうに揃っているのにビックリしたっけ(笑)。

ビリー・プレストンの熱唱にも圧倒された記憶がある。
映画『レット・イット・ビー』で彼がソウルフルなキーボード・プレイヤーであることはよくわかっていたが、 歌もじつにパワフルで魅力的で思わず引き込まれてしまう。
感極まったかのように躍り出すのも印象的だ。



メイキングを見ると、夜の部では最初のころの緊張も解けてとてもいい気持ちになり、思わず踊りだしたと回想していた。

リオン・ラッセルは当時すでに有名で、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」から「ヤング・ブラッズ」につづくカヴァーも 深夜放送でガンガンかかっていたから驚かなかった。



それよりもギブソンのエクスプローラーでシャープな音を聞かせるドン・プレストン(g)(=右から3人め)や、 デラボニのころからクラプトンの盟友でもあるカール・レイドル(b)(=同じく5人め、後ろ向き)の姿が目を引く。

クライマックスはやはりディランだ。
ぼくは70年の『新しい夜明け』で初めて彼のアルバムに親しんだのだが、この映画におけるディランの存在感は圧倒的だった。
前述のレココレを読むと69年8月のワイト島以来の公式なライヴだったようで、とてもナーヴァスになっているようすは メイキングにも捉えられている。
「女の如く(ジャスト・ライク・ア・ウーマン)」ではギターのジョージとベースを弾くリオンがコーラスをつける場面が見られるが、 昼の部では4拍子だったのに、夜には3拍子になってとまどったとコメントしていた。



Disc-2のメイキングでは、クラプトンやリンゴはもちろんのこと、リオン、ビリー、 ジム・ケルトナーなどが当時を振り返ってコメントをしてくれる。




ひさびさに見るリオンやビリーはずいぶん変わってしまいましたね。
リオンってZZトップにいた?と思ったのはぼくだけ?(笑)。




『ローリング・ストーン』誌のヤン・ウェナーは当然としても、国連のアナン事務総長までDVDに出ているのを見ると、 このイヴェントがいかに意義のあるものだったかが伺える。

ボーナス映像はやはりディランの「Love Minus Zero No Limit」と、 サウンド・チェックのときの「If Not for You」の映像だろう。



Love Minus Zero No Limit」は昼の部の演奏で、「If Not for You」のイントロで出て聴衆は一瞬どよめくが、 素晴らしい演奏だ。



最後にいくつか気になったことを書き留めておこう。

まず、本編はじめのインタヴューでジョージがやけに険しい顔をしてるのは、ビートルズのことばかり聞かれて不愉快に なっていたからだそうだ。

字幕はDVDではかなり字数が増えて直訳に近くなっている。
旧版はおそらく映画と同じものなのだろう、新村一成のクレジットがある。
たとえばジョージがこのコンサートを企画した理由をたずねられて、旧版では「ある友人の話からだ」となっていた部分を DVDでは「友人に頼まれたから、ただそれだけだ」と訳している。
たしかに「That's all.」と言っているのだが、あまりにもイノセントな答を揶揄するような響きに聞こえるのはぼくだけだろうか。

ディランの参加に関するジョージのコメントの部分では、旧版が「ディランは特に入れ込んでいた」となっているのに対して、 DVDでは「ボブ・ディランも難民救済に関心を持っていた」とずいぶんニュアンスの違う訳になっている。

ラヴィのコメントで
「私たちは政治家ではないが、音楽という芸術を通してみなさんに苦悩を訴えたい。
バングラデシュとインド難民たちの深い痛みと嘆きを理解してほしいのだ」

という部分が、旧版では
「我々は政治的にコミットしない。
音楽を通じてバングラデシュの惨状やインド流入難民の悲劇を伝えたい」

となっているのはたいへん的を射たコンパクトな訳だと思うのだがいかがだろう。
とくにDVDでは「インド難民」となっていて、バングラデシュからインドへ逃れた人々をさすということが曖昧であるような気がする。

最後に音質について述べておきたい。
DVDの音質はきわめてクリアーなもので、いささかスペクター・サウンドが薄れてしまっているような気はするが、 リマスターとしてはひじょうによいと思う。
ただ、ドルビー・デジタル、ドルビー・デジタル5.1ch、dts 5.1chという3つの音声を持っている点は注意が必要だ。
最初にジョージがステージに現れたときにあまりにも聴衆の歓声がすごくて、なかなかしゃべれないというシーンがあるのだが、 これをただのドルビー・デジタルで聞いているとその部分がわかりづらい。
ジョージは何を待ってるんだろう、と思ってしまうのだ。
おそらく5.1chだとリア・スピーカーにかなりの歓声が回っているのだろう。

なお、今回この記事を書くにあたって『レコード・コレクターズ』2005年12月号を参考にさせていただいた。
かなり資料的にも充実しているので、『コンサート・フォー・バングラデシュ』に興味をお持ちの方には一読をお薦めする。



© 2005 ryo_parlophone




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