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JAZZの愛聴盤-27

今回はちょっと趣向を変えて映画のご紹介。
こういう寝苦しい夏の夜には、史上初の本格的ジャズ・ムーヴィーといわれる『真夏の夜のジャズ』を見ながら しばしの涼を味わおう(笑)。

『真夏の夜のジャズ』はモダン・ジャズがもっともモダン・ジャズらしかった時代、1958年7月の ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルを捉えた記録映画である。

ぼくがこの映画を最初に見たのは70年代の半ばごろ、まだ大学生のころで、福岡のずいぶん遠い映画館 (市民会館のような場所だったような気もする)まで出かけたことを思い出す。
(ぼくはなんとなく1973年ごろのことだと思っていたのだが、bassclefさんの記録によると この映画がリヴァイヴァル上映されたのは1975年のことだったらしい。)
そのときのお目当てはセロニアス・モンク(p)やジェリー・マリガン(bs)、そしてなんといっても、 初めて目にする「動くエリック・ドルフィー」だった!!
現在のようにDVDはおろか家庭用ヴィデオもほとんど普及していなかった時代。
ジャズマン、とくに故人の演奏する姿を見れるなんて機会はそう多くはなかったのだ。

それが今では手軽に家庭で見ることができる。
夢のようです(笑)。
では、出演者の顔ぶれを画像とともに紹介していこう。

映画はジミー・ジュフリー3の「Train and the River」で始まる。



ジミー・ジュフリーのテナー・サックスにボブ・ブルックマイヤーのバルブ・トロンボーン、 そしてギターのジム・ホールというトリオ。
緊密なコラボレイションのなかで、静かだがスリリングな演奏が繰り広げられる。

映像は同じ場所で繰り広げられていたアメリカズ・カップのようすなどを交えながら、 つぎつぎにモダン・ジャズの歴史を作っていった巨人たちの姿をとらえていく。

野口久光さんの解説によれば、実際には4日にわたって行われたフェスティヴァルのようすが1日のステージのように 編集され、タイトルも『JAZZ ON A SUMMER'S DAY』と題された。
日本では1960年に劇場公開され、当時のジャズ・ファンの間で大きな評判になったらしい。
公開時の題字は野口さんご自身だから、『真夏の夜のジャズ』という邦題を考えられたのも野口さんだったかもしれない。

すぐにセロニアス・モンクが画面に登場し、トリオで「Blue Monk」を演奏し始める。



この日はトレードマークの帽子はかぶっていないが、フレームに竹を使ったメガネがかっこいい。

つづいてソニー・スティットのクインテットが「Blues」を演奏する。



盲目のギタリスト、サル・サルヴァドールのソロも味わいがある。

そして最初のクライマックスはアニタ・オデイ(vo)だ。



白い羽飾りのついた黒の帽子に黒のドレス、そして白の手袋という清楚な姿で現れたアニタは 「Sweet Georgia Brown」と「二人でお茶を」の2曲を歌う。



スキャットで伴奏陣とアドリブの応酬をするアニタの圧倒的な歌唱は、そのへんのジャズ・ヴォーカリスト (を名乗っている女性歌手)が単なるモノマネに過ぎないことを如実に見せつけてくれる。
聴衆もスタンディング・オベイションだ。



アニタの熱演に聴き入る女性。

監督は写真家として著名なバート・スターン。
そのスタイリッシュな映像には、かれのジャズに対する愛情が溢れている。
ジャズマンの姿を8ミリに収める女性や、



家族連れで楽しむ聴衆たちの姿。



演奏シーンの合間に挟まれる映像もそのまま絵葉書になりそうな美しさだ。
音楽に合わせて屋根の上で踊る人々、



その隣りでキスをするカップル……。



そして子どもの描き方がじつにすばらしい。

あたりが夜の帳に包まれると、ジョージ・シアリング(p)のクインテットが登場する。



コンガのアーマンド・ペレーサの姿が見られるのもうれしい。

ダイナ・ワシントンはマックス・ローチとの共演で「All of Me」を熱唱。
ヴァイブのテリー・ギブスといっしょになって見事なマレットさばきも見せてくれる。

ジェリー・マリガン・カルテットはトランペットがアート・ファーマー、ベースは『さよならバードランド』の著作でも 有名なビル・クロウだ。



このころのマリガンはそのままハリウッド映画にも出れそうなくらいかっこいい(笑)。



nowattsさんお気に入りのビッグ・メイビル・スミス(vo)はビヤ樽のような体型にキュートな笑顔で、 迫力満点のヴォーカルを聞かせる。

つづいて、なぜかチャック・ベリーが登場、「スウィート・リトル・シクスティーン」を 演奏してやんやの喝采を浴びる。

そしてついにエリック・ドルフィーが静かにフルートを吹く、チコ・ハミルトン・クインテットがスクリーンに登場する。
チコのドラムもかっこいいが、



後年の激情を叩きつけるようなアルトやバスクラと違う静謐なドルフィーはやはり圧倒的な存在感だ。

そのあと映画は、トランペットの巨人ルイ・アームストロング(ジャック・ティーガーデン(tb)やピーナッツ・ハコー(cl)の 姿も見ることができる)の演奏と、



ゴスペルの女王マヘリア・ジャクスンの熱唱で幕を閉じる。

もうひとつこの映画の中でぼくが好きなシーンは、チコ・ハミルトン・クインテットの練習の合間にネイサン・ガーシュマン(cello)が、 バッハの無伴奏チェロ組曲第1番の主題を弾き始めるところ。



文句なしにかっこいい。

ぼくはレーザー・ディスクしか持っていないが、DVDもリリースされているので、未見の方はぜひどうぞ。
繰り返しになるが、モダン・ジャズがもっともモダン・ジャズらしかった時代のすばらしい映像を演奏をたっぷりと楽しむことができる。



JAZZ ON A SUMMER'S DAY
directed by BERT STERN

2006/08/06 © ryo_parlophone





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