JAZZの愛聴盤-25セロニアス・モンクの代表作の一つである「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」は、モンク自身の演奏もさることながら
マイルズ・デイヴィスのクインテットによる名演でも広く知られている。 チャールズ・ミンガスの『直立猿人』での演奏で知られるJ.R.モンテローズをテナーに据えて、
ドーハムがザ・ジャズ・プロフェッツというグループを結成したのは1956年初頭のことだと思われるが、
4月4日にはクリード・テイラーをプロデューサーに迎えてファースト・アルバムを録音、
つづいて5月31日にはブルーノートに当アルバム『アット・ザ・カフェ・ボヘミア』を吹き込んでいる。 アルバムはドーハムのオリジナル「MONACO」で始まる。 つづく「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」は、マイルズのコロンビア盤に先立つこと4か月だが、
モンクの作品の孤独な美しさを見事に描き出している。 3曲目の「MEXICO CITY」はドーハムのオリジナルとクレジットされているが、曲はバド・パウエルの
「テンパス・ヒュージット」。 Side-2は「チュニジアの夜」で幕を開ける。 さらにピアノ・トリオをバックに、これぞバラードのお手本とでもいうべきドーハムの美しい 「ニューヨークの秋」をはさんで、最後はドーハムのオリジナル「HILL'S EDGE」で幕を閉じるのだが、 ここではスウィンギーなバレルとティモンズの好演が光る。 アルバム・タイトルには「ボヘミア」というエキゾチックな地名がついているが、それ以外にもモナコ、 メキシコ、チュニジア、ニューヨークと地名を織り込んだ曲が並び、洒落たアルバムになっている。 なお、ABCに吹き込んだファースト・アルバムも地味ながらなかなか味わいのある作品で、 こちらはぜひリマスタリング、紙ジャケでCD化してほしいところである。 KENNY DORHAM
"'ROUND ABOUT MIDNIGHT AT THE CAFE BOHEMIA" BLUE NOTE 1524
2006/05/24 © ryo_parlophone JAZZの愛聴盤-24ぼくは「Just Squeeze Me」という曲が大好きで、コルトレーンを擁したマイルズ・クインテットのアルバムのなかでは ほとんど目立たない『MILES』もこの曲が入っているために愛聴しているくらいだが、 最高の名演はやはりジョー・スタッフォードが歌ったこのアルバムのなかの1曲だろう。 今回ご紹介する『Jo+Jazz』というアルバムはジョーの1960年の作品で、このとき彼女は40歳。 岩浪洋三のライナーによるとジョー自身が原盤を米コロンビアから引き上げてしまい長いあいだ廃盤の憂き目にあっていたのを、
CBSソニーが直接本人と交渉して販売権を獲得、発売にこぎつけたものだという。 曲はジョニー・ホッジスのアルトに導かれて始まり、そこにジョーの優雅で気品のあるヴォーカルがかぶさってくる。 Treat me sweet and gentle When you say goodnight う〜ん、なんて素敵な歌詞だろう。 ジョニー・マンデルのアレンジは3本のトランペットを中心に、トロンボーンやバリトンを巧みに配した絶妙なアレンジで、 そこはかとなくエリントン・ムードが漂う。 ホッジスのアルトはB-5の「Day Dream」でも幻想的なソロを聞かせるし、 ベンはA-4の「帰ってくれればうれしいわ」やB-6の「I've Got the World on a String」でスウィンギーながら 優雅なソロを聞かせてくれる。 わが国では「帰ってくれればうれしいわ」というと、やはりなんといってもヘレン・メリルの名唱に人気があるが、 ジョーの歌うこの曲もゆったりとしたテンポの中に気品溢れるもので、ヘレンとはまた違った魅力をもっている。 B-1の「What Can I Say After I Say I'm Sorry」など、もう少し軽さがあってもいいかな、と思う部分もあるが、 B-2のバラード「Dream of You」なんかは、マイクにぐっと近づいて歌っているのだろうか、 その声にすごいリアリティーがあって、大人の女性らしい気品のある色香に聴いているだけでぞくぞくしてしまう。 現在、このアルバムの版権がどうなっているのか知らないが、ぜひ紙ジャケでリリースしてほしいアルバムだ。 JO STAFFORD "Jo+Jazz"
COLUMBIA CS 8361
2006/04/21 © ryo_parlophone JAZZの愛聴盤-23このアルバムは、まだジャズを聴きはじめたばかりのころたまたま入ったレコード・ショップで手に入れた。 メンバーも魅力的だった。 録音は1955年の10月21日。 聴きどころはなんといってもA面の3曲である。 2曲目の「Blue Doll」は妻のドールをテーマにしたマクリーン自作のブルーズ。 そしてこのアルバムの白眉はこれ以降マクリーンの代表作にもなる「Little Melonae」。 じつはこの録音の5日後にマイルズのクインテットもこの曲を録音していて、そこでのマイルズやコルトレーンの ソロはまあ平均点ぐらいの出来だと思うが、オリジナルにはなかったピアノのイントロがすばらしいし、 ガーランドのソロは中低域を主にしたふだんとはまったく趣きの異なるものなので、 未聴の方は機会があれば聴いていただきたいと思う。 さてもうひとつのハイライトがラストに収められた「Lover Man」だ。 買ってしばらくしてから、このアルバムがファンの間では「ネコのマクリーン」と呼ばれて
人気があると知った。 たしかに「ネコ」でありました。 "jackie mclean"
ad lib 6601
2006/03/18 © ryo_parlophone JAZZの愛聴盤-22ギル・エヴァンスは自分のオーケストラのトランペットにマイルズが欲しいとき、
よく代役としてジョニー・コールズに吹かせたらしい。 しかし「きみのトランペット、マイルズにそっくりだね」と言われて喜んでいいのはアマチュアだけで、
プロのミュージシャンにとっては「お前の演奏はモノマネだ」と言われているに等しい。 さて、ブルーノートに残されたこのアルバムは、レオ・ライト(as, fl)、ジョー・ヘンダースン(ts)、
デューク・ピアスン(p)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds、A面)、ピート・ラロカ(B面)という
セクステットによる1963年の録音だ。 たとえば冒頭のタイトル曲はピアスンのペンになるミディアムのブルーズで、 先発のレオ・ライトは張り切ってじつにエモーショナルなソロを展開するのだが、 つづくジョニー・Cのソロは2年ぶりのリーダー・セッションとは思えない落ち着きぶりで、 サウンドはウォームだが構成としてはじつにクールなものだ。 そういう彼のスタンスがほかのメンバーにも伝わるのか、2曲めの「Hobo Jo」はジョー・ヘンが書いた、 ちょっとリー・モーガンの「サイドワインダー」風のジャズ・ロックなのだが、最初に出るジョニー・Cのソロはもちろん、 フロント3人のソロはじつにおとなしい控えめなソロになっている(笑)。 そういう彼の美点が遺憾なく発揮されるのは、B面ラストの「So Sweet My Little Girl」というバラードで、 ほかの楽器のアンサンブルに載って静謐なテーマを吹くジョニーのトランペットはじつに美しい。 しょっちゅう聴きたいというわけではないが、ちょっと疲れた体を心を癒したいときになんとなくターンテーブルに載せてみる、 そんな1枚だ。 JOHNNY COLES "little johnny c"
BLUE NOTE BST-84144
2006/02/10 © ryo_parlophone JAZZの愛聴盤-21いつもは入門書などには載らないちょっとだけマイナーな愛聴盤を紹介しているこのコーナー、 今回は大名盤トミー・フラナガンの『オーヴァーシーズ』だ。 なんといっても『スイング・ジャーナル』誌選定ゴールド・ディスク第1回受賞作品なわけで、
ぼくがジャズを聴きはじめた70年代の初めごろには、ゴールド・ディスクといえばそれだけで名盤だった。 『オーヴァーシーズ』はその名のとおりストックホルムで録音されていて、メンバーはピアノのトミ・フラ、
ベースがウィルバー・リトル、ドラムスがエルヴィン・ジョーンズという顔ぶれ。 トミー・フラナガンという人はジャズ史に名を残すような巨人ではないし、そのプレイもけっして派手ではない、
いぶし銀のようなピアニストなのだが、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』、
ジョン・コルトレーンの『ジャイアント・ステップス』というテナーの2大巨人の2大名盤でピアノを弾いている。 このアルバムを聴いてまず感心するのは選曲と配曲のバランスのよさだ。 こんな調子でトミフラのオリジナルが2曲続いてA面が終わると、
B面の1曲目はあきらかにこのアルバムのハイライトである「リトル・ロック」だ。 アルバムはもともとスウェーデンのメトロノームというレーベルに吹き込まれたが、のちにプレスティッジが音源を買い取って
広く聴かれるようになった。 この大名盤がわが国では長い間廃盤の憂き目にあっていて、OJCのCDでしか手に入らない。 TOMMY FLANAGAN "OVERSEAS"
PRESTIGE 7134
2006/01/05 © ryo_parlophone
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