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2005年最初のモービル・フィディリティ・サウンド・インプレッション Chapter15は、 ジョンのソロ・アルバムとしてはもっとも評価の高い『イマジン』を取り上げます。

いつものようにマテリアルについても少し紹介しておきましょう。

イマジン』は1971年にリリースされた、ジョンのセカンド・アルバムですが、 ぼくがこのアルバムを手に入れたのはジョンの死後です。

ビートルズの解散がだんだん現実味を帯びつつあった69年当時、「平和を我等に」や「冷たい七面鳥」といった ジョンのリリースするシングルは、それまでのビートルズとは趣きの違う、どちらかというとざらっとした手触りの感じられるような 曲が多く、それなりに楽しめるものの、ジョンがどんな音楽を目指しているのかはよくわかりませんでした。

そして70年の年の瀬も押しつまった12月28日にリリースされた「マザー」を初めてラジオで聴いたとき、 「ああ、もう終わったんだ、ジョンはこんなところまで来てしまったんだな」と思ったものでした。
ご存知のとおり、「マザー」はジョンの極私的な歌で、グループでのエクスプレッションを まったく必要としないものでした。
もの悲しげな鐘の音につづいて、「おかあさん、ぼくはあなたのものだった、でもあなたがぼくのものであったことは一度もなかった」と 叫ぶように歌いだされる「マザー」は、たしかにこころ揺さぶられる歌ですが、そのころぼくがメンバーに求めていたのは もっとビートルズ的なものでしたから、しだいにジョンに対するぼくの興味は薄れていきました。

そんなこともあって、ぼくはこのアルバムについてあまり多くを語る資格を持っていません。
タイトル曲「イマジン」はジョンの代表曲であるだけでなく、つい先日も米Rolling Stone誌が選んだ「ロックの名曲500」で 第3位に選ばれたように、20世紀を代表する楽曲として永遠に輝きつづけるでしょう。
そして「Oh My Love」は個人的にとくに好きなジョンの曲の一つです。

ではまず、オリジナルのUK盤からご紹介してゆきましょう。



レコード番号はPAS 10004で、アメリカよりやや遅い71年10月8日にリリースされました。
スリーヴは表裏ともヴィニール・コーティングのほどこされた美しいもので、「Printed in England」という表記はありますが、 製造会社のクレジットはありません。
imagine the clouds dripping. dig a hole in your garden to put them in. yoko '63」という一文が レコード番号などのうえに書かれていて、「imagine」というタイトルがヨーコからインスパイアされたものであることを 示しています。
それにしてもこういうのを目にするたびに、ヨーコという人はほんとうに優れた芸術家だったんだなあ、と感心させられます。



レコードはピクチャー・レーベルになっていて、Side-1はアップルの輪郭のなかにジョンの顔が映ったもの、 Side-2はアップル・レーベルになっています。
マトリクス関係はSide-1がYEX 865-1U、マザーは1、スタンパー・コードが GOG 、 Side-2はYEX 866-1U、マザーは3、スタンパー・コードが GPR となっています。
さらに手書きでSide-1にPORKY、Side-2にPECKOのサインがありますので、 有名なマスタリング・エンジニア、ジョージ・ペッカムの手によるものということになります。



インナー・バッグは片方に曲ごとの詳しいパーソネルが記載され、片方には歌詞が印刷されています。



PHOTO BY PETER FORDHAM」というクレジットのある大型のポスターと、 ポールの『ラム』をおちょくったポスト・カードがついています(やれやれ……)。

つぎはUS盤です。



レコード番号はSW 3379、英国より1か月早い、71年9月9日のリリースです。
UK盤よりやや厚手のスリーヴですが、やはり表裏ともヴィニール・コーティングされています。
バック・シールデッド・カヴァー(フロントの紙を後に折り曲げて、そのうえにバック用の紙を貼るタイプ)なので、 上下にフロント・カヴァーの色が見えています。
バック・スリーヴは左下からコーティングが剥がれかけています。



レーベルはUK盤とほぼ同じですが、リムのクレジットと、Side-2のアップルの色がずいぶん違っています。
マトリクス関係は手書きでSide-1がSW-1-3379 Z 26、その後に小さく薄い文字で 2 #5、 Side-2がSW-2-3379 Z 26、やはりその後に小さく薄い文字で 2 #3となっています。
さらに両面とも Bell Sound の刻印と、手書きで sf のサインがあります。
たまちさんのご教示によると、サム・フェルドマンという有名なエンジニアのサインだそうです。



インナー・バッグもUK盤に準じていますが、真ん中に穴が開いているタイプ。



ポスターはぼくが買ったものにはついていませんでした。ポスト・カードは野獣に扮したジョンがパンフルートを吹いているもの?
これについてはぼくはよくわかりません。どなたかご存知の方ご教示ください。

つづいてモービル盤です。
発売日がよくわからないのですが、カタログ・ナンバーがMFSL 1-153ですから、1984年ごろのリリースではないでしょうか。



コーティングのない厚紙のジャケット。
おなじみの「ORIGINAL MASTER RECORDING TM」というロゴが 緑色の帯状のラインの上に書かれているため、ジャケットの写真も全体的にグリーンがかっていて、 オリジナルよりやさしい色合いになっています。



おなじみのホワイト・レーベルとレコードを保護するための厚紙です。
ポスターやポスト・カードはもちろん、歌詞カードさえついておりません。
音質だけにこだわったということでしょうか(笑)。

さて、それではこの3枚を聴き比べてみましょう。
かたやPORKY & PECKOジョージ・ペッカム・マスタリング、かたやBell Sound、そして 残る1枚はモービル盤と、なかなか興味をそそる聴き比べです。
ではまずUKオリジナル盤です。
フィル・スペクター・プロデュースということもあり、ベールを2枚か3枚かけたような、やや古色蒼然とした響き。
ストリングスもなんとなくコピーを繰り返したような、ノイズ感があります。
それでもA-2「Crippled Inside」のスライド・ギターなどはなかなかいい音がしているし、 ギター、ピアノ、ベース、パーカッションだけをバックに歌われる「Oh My Love」はクリアで、 目の前で演奏しているような感じがあります。

つづいてUS盤
いかにも米国マスタリング、という感じのメリハリの効いた音です。
ジョンの声もUK盤に比べると硬質で、曲によってはやや引っ込む感じもありますが、じゅうぶんに際立って聞こえます。
それぞれの楽器が活き活きと響いて、個人的にはUK盤よりこちらの方が好ましく感じられました。

最後はモービル盤です。
イマジン」のイントロからして鳴り方が違います。
ダビングされたピアノがきちんと分離して部屋の中に広がります。
ジョンのヴォーカルもリアルだし、ベースのゴリっとした音色もいい感じです。
ストリングも美しく、ちょっと聞くとリマスタリングし直したのかと思うような鮮度の高い音です。
ばあいによってはフィル・スペクターらしさが薄まって聞こえるのかもしれませんが、 モービル・フィディリティの技術力が感じられます。

ということで、ぼくの耳にはモービル盤がもっとも魅力的でした。
80年代後半の、アナログからデジタルへと技術の中心が移行していく時期に、 レコードがいかに高いクオリティーを持っていたかということをまざまざと感じさせる、 今回の試聴になりました。

special thanks to Mr.Tamachi
© 2005 ryo_parlophone




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