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SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND
今回は『サージェント・ペパーズ』を取り上げます。 20世紀が生んだロックの金字塔とまで言われながら、 ミュージシャンやコアなファンからの評価がだんだんと下がっている本アルバムですが、 ぼくは未だに好きです。 4トラックのテープ・レコーダーながら現在でも十分通用する音のマジックを作り上げた 当時のスタッフたちの熱や志は、MFSL盤でどう聞こえるか。 さて、今回聴いたのは次の4枚です。
比較に試聴したのはA面最後の ジョージの弾くストラトの太く歪んだ音が印象的なA-5「Fixing a Hole」、 ストリングスのアレンジが美しいA-6「She's Leaving Home」、 スティーム・オルガンやテープ・ループなどを駆使したカラフルな音像の A-7「Being for the Benefit of Mr Kite!」という3曲です。 まず、オリジナルのモノラル盤を聴いてみました。 ただしカートリッジをモノに換えると音そのものの傾向が変わるおそれがあるので、 今回はアンプのセレクターでモノを選んで聴いています。 モノラル盤はテープの回転を早めたり、エコーを深くかけたり、 イコライジングをいじったりしていて、ステレオ盤とそのまま比較することは困難ですが、 どちらかというと鮮度の低い音で、あまり「いい音」という印象はありません。 ただA-7の「Being for〜」はカラフルで楽しい感じがよく出ています。 次はUS盤。カッティング・レベルが高く元気のいい音です。 きちんと比較するためにヴォリュームを少し絞って聴かなくてはなりませんでした。 印象的だったのはA-6のポールの声やA-7の装飾音がとてもリアルだったこと。 ポールの声はまるでレコーディング・スタジオで唄っているのを、 隣のミキシング・ルームで聴いているみたいです(聴いたことありませんけど(笑))。 A-7のオルガンやテープ・ループの音はリアルなので逆に、 夢のなかの世界のような幻想的な雰囲気が損なわれるような感じがしました。 ぼくはオリジナルから3年遅れて1970年から『サージェント』を聴いていますが、 一番よく聴いたのがシルヴァー・パーロフォンなので、 『サージェント』といえばこれ、という感覚があります。 A-5のイントロのチェンバロが薄っぺらに聞こえたり、 A-6のイントロのハープの音がやや歪んでいたりと欠点もいくつかありますが、 大変に鮮度の高い音で、今から考えれば性能の劣った4チャンネルのテープ・レコーダーで ダビングを重ねたというのが嘘みたいです。 シンバルやバスドラは存在感があるし、ジョンの声も左右にふわっと広がっていい感じです。 一番耳になじんでいるので、よく聞こえるのかもしれませんね。 おもしろいのは、A-5でジョージの弾くストラトの音が、 US盤ではディストーションをかけて歪ませたように聞こえるのに、 このUK盤ではチューブアンプを歪ませたナチュラルなオーヴァードライヴのように聞こえることです。 さて、モービル盤です。 このレコードは比較的最近手に入れたもので、まだ数回しか聴いていないのですが、 これぞモービルといったいい音だなあという印象を持っていました。 ところが、今回ぼくはこれを聴いて考え込んでしまいました。 UKステレオ盤の欠点だったチェンバロやハープも美しく聞こえます。 ストリングスも鮮明に聞こえますし、ポールの声もリアルです。 A-7のジョンの声もイコライジングしているはずなのにとても自然です。 ただ、楽しくないのです(笑)。 音の違いをレポートしようと分析的に聴きすぎてしまったのかもしれません。 うまくいえませんが、たとえば、美しい自然の風景を撮った1枚の写真があるとしますね。 どこかにピントがあっていて、周辺はナチュラルにボケます。 そのボケが風景の美しさをさらに引き出しているとすれば、 モービル盤にはそのボケがないのです。 隅から隅まで鮮明です。 それが音楽の楽しさを逆に奪っている……ってこんな感じかなあ。 贅沢な注文といえばそうなんですけどね。 ふだん聞くにはとてもいい音だと思うんですけど、じゃあ1万数千円出す価値があるか? と訊かれると、UK再発盤でもいいんじゃないかなあ。
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