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まず驚かされるのはベースの重さと太さ。「Birthday」ではベースが楽曲をリードしてゆくという構成が明らかです。
モノラルなのに音が塊にならずにきちんと描き分けられるので、
ポールのヴォーカルとジョンのコーラスがはっきり中央に定位しながらもきちんと分離して聞こえます。
女声コーラスの美しさも魅力的です。
「Yer Blues」ではジョンのヴォーカルとドラムスがまるでデュオのように張り出して聞こえ、ジョージの弾くギブソンSGは
まろやかながらも存在感があります。
「Me and My Monkey」でも、それぞれの音がきちんと明瞭に響き渡ります。それにしてもジョージの弾くストラトの美しいこと。
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次に限定モノラル盤です。
オリジナル・モノラル盤とほぼ同傾向の音ですが、曲によってはやや高域にシフトしたようにも聞こえます。
「Yer Blues」ではジョンのヴォーカルがやや引っ込み、少し離れた場所で唄っているようです。
「Mother Nature's Son」でポールが弾くD-28はなめらかで穏やかな美しい音。
おおまかに言って、モノラルでありながら立体的な録音が楽しめます。
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つづいてUK再発ステレオ盤。
とにかく1曲目からベースの重低音がすごい!!
オリジナル・モノラル盤をさらに上回る重さと太さ。
マスキングされてコーラスが聞こえないほどで、ヴォーカルの異様なテンションの高さと相俟って、
聞くものの胸をいやが上にも熱くします。
一つ一つの音の分離が明瞭で鮮度の高い音です。
「Yer Blues」ではジョンの声が小さく定位し、声もやや高く聞こえます。ジョージの弾くSGは
ヒステリックで、この曲のイメージを決定づけています。C-3のポールのアコギも響きが美しく余韻がたなびくようです。
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4枚めは国内初盤のステレオ・アップル赤盤です。
もう30年以上聴いてきた音ですが、UK盤と比較すると高域にシフトしたやや聞き疲れのする音です。
たとえば「Birthday」ではシンバルやヴォーカルの破擦音(take a cha-cha-cha-chande)が歪んで聞こえます。
ただプラスの面もあるので、「Yer Blues」ではジョンの声に張りをもたせているし、
「Mother Nature's Son」ではD-28が000-28になったようにも聞こえますが、きらびやかな高音はなかなか魅力的です。
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モービル盤です。
カッティング・レヴェルが低いのでとにかくできるだけヴォリュームを上げて聴くこと、これがモービル盤を楽しむ秘訣です(笑)。
やはりこれも重低音がすごい!
そしてチャンネル・セパレーションがよいのでヴォーカルとコーラスが左右に大きく広がります。
モノラルでは気づかなかったようなところにも耳が行くので、たとえば「Yer Blues」で8ビートになって
間奏が始まると急にスネアが前に出て鳴り始めるところなど、思わずミックス違いかと思ってしまいました(笑)。
実はチャック近藤さんの著書のなかで、「Mother Nature's Son」でポールが弾いているギターはD-18だと書いてあったんですが、
モービル盤を聴いていると、そういえばD-18っぽい音だなあと感じてしまうところがすごいと思います。
ただC-4では、それぞれの音があまりにも明瞭で高品位に再生されるので、狂騒的で疾走する感じはやや抑えられる気がします。
ちょっと上品なボクとボクのモンキー。
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最後は30周年記念の紙ジャケCDです。
全体的に低域のレヴェルを少し抑えて中高域をやや持ち上げ、ヴォーカルを前面に出すようなリマスターが行われているように
感じました。「Birthday」ではヴォーカルの左右にふわりと女声コーラスが広がり、これはこれで魅力的。
「Yer Blues」のジョージのギターは十分にヒステリックで、存在感を主張します。
高域の強調はアコースティック・ギターも華やかに聞かせるので、「Mother Nature〜」のポールのギターはD-45になったように聞こえます。
いったいどれがほんまやねん!…たぶんD-28(根拠はありません)。
バスドラの音もほどよい重さで気持ちよく響いてくれます。
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さて、どれか1枚選べ、といわれると困りますねえ。
オリジナルのモノラル盤か、ステレオ盤か……。
はっきりしているのは東芝音工のアップル赤盤がいちばん音質的には厳しいということで、
30年以上聴きなじんできたレコードなだけにちょっとショックでもありますが、
逆にいうともっと素晴らしいアナログ盤が何種類もあるということで、アナログ再生の奥の深さをあらためて認識させられたしだいです。