BEATLESのアナログ盤
RUBBER SOULビートルズが遺した13枚のオリジナル・アルバム(EP2枚組としてリリースされた『MMT』を含む)を前期・中期・後期に分けるとすると、
このアルバムから中期に入ったと考えるのが一般的な分け方だと思います。 個人的な思い出話を書かせてもらうなら、大学生のとき、尊敬していた部活の先輩がだんだん大学に来なくなって、 心配になって久しぶりに彼の下宿を訪ねたとき、テーブルの上に置かれていたのがこのアルバムでした。 元気そうだったけどどこか淋しげでもあった先輩の笑顔とともにこのアルバムを思い出します。 ではまずUKオリジナル・モノラル盤のファースト・プレスからご覧ください。 |
今までジャケット・デザインのなかで大きな位置を占めていた「パーロフォン」のロゴ・マークは右下の目立たない位置に移動し、
mono(またはstereo)の表記や、THE BEATLESというアーティスト名はフロント・カヴァーからなくなりました。
そして左上にあしらわれたアルバム・タイトルの「RUBBER SOUL」というレタリングは、
いわゆる「サイケデリック」な時代の到来を思わせます。 表のみコーティングが施され、裏は三方向に折り返しのあるフリップ・バックのスリーヴでGarrod & Lofthouse社製です。 |
レーベルはおなじみのイエロー・パーロフォン、リムのクレジットは前作『ヘルプ!』から「THE GRAMOPHONE CO.LTD〜」で始まるものになっていて、
レーベル左側の表記も「(P)1965」という簡略化されたものです。 ちょっと写りがよくないんですが、マトリクスの枝番-1の刻印です。 つづいて2ndプレス。まずご覧いただくのはスリーヴがErnest J. Day社製のものです。 |
フロント・カヴァーは「RUBBER SOUL」のタイトル・ロゴがやや明るめで鮮やかに見えます。 バック・カヴァーの折り返しは、この写真ではわかりにくいと思いますが、Garrod社製より少し幅広になっています。 Garrod社には「12 LL」、Ernest社には「6512 LL」というクレジットが記載されています。 |
レーベルはイエロー・パーロフォンですがフォントが違っていて、マトリクス-1はサンセリフ系でしたが、
こちらはタイム・ローマン系のものが使われています。 では、同じくマトリクス「XEX 579-4、XEX 580-4」という2ndプレスをさらに2枚ご紹介して、 レーベルのちょっとした違いを見ていただきましょう。 |
左側はタックス・コードがMTで、この年代としては比較的珍しいものです。 5枚めは再発のステレオ盤です。 |
表はコーティング・ジャケットですが、裏の折り返しはありません。Garrod & Lofthouse社製です。
レーベルはシルヴァー・パーロフォンでEMIのロゴが二つある2EMIマークス。
リムのコピーが「EMI RECORDS〜」で始まる74年以降のタイプで、
マトリクスはYEX178-5、YEX179-3、マザー番号とスタンパー・コードはA面が「2/RO」、B面が「24/GAL」
となっています。 つづいてUS盤をご紹介しましょう。 まずはオリジナルのモノラル盤です。 |
レコード番号はT-2442で、ラバー・ソウルのロゴの色が違うほか、全体的な色味もやや違います。 |
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左下にはプロデューサー、ジョージ・マーティンのクレジット、右下にはフォトグラファー、ロバート・フリーマンのクレジット
が入っています。右下のナンバーは6。 |
レーベルはレインボウ・キャピトルで、マトリクスは手書きで、Side-1がT-1-2442-G-10で、その左に
同じく手書きで数字の2、Side-2はT-2-2442-G-12で、その右に刻印で数字の2が入っています。
ディスクの重さは140g。 |
残念ながらオリジナル・インナーはついていませんでした。ここでは同時期のアルバムから65年夏ごろに使用されたものを載せています。 つづいてはステレオ盤でレコード番号はST-2442。 |
米キャピトルが「FULL DIMENSIONAL STEREO」というキャッチ・フレーズで音質のよさをアピールしていたことは、
第3回の『MEET THE BEATLES!』のところで書きましたが、それが改良され、
「NEW IMPROVED FULL DIMENSIONAL STEREO」となっています。 |
70年代に出たアップル・レーベル盤で、マトリクス関係はSide-1がST-1-2442-H17#3、
Side-2がST-2-2442-H19#4で、ディスクの重量は145gです。 こうしてUK盤と同じタイトル、同じジャケットでリリースされたのですが、驚くべきことに収録曲が違うのです。 |
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従来どおり収録曲はオリジナルより2曲少ない12曲で、しかも両面トップの曲がそっくりカットされ、
A面1曲目はポールの「I've Just Seen A Face」(「夢の人」)、B面トップはジョンの「It's Only Love」という、
いずれも前作『ヘルプ』に収められていた作品に入れ替えられているのです。 いったいどんなつもりでだれがこんな編集をしたのか、アメリカ盤におけるプロデューサーの表記がありませんので確かめようもありませんが、 これじゃあビートルズのメンバーも怒ったでしょうね。 |
もうひとつ特記しておかなければいけないのが、「I'm Looking Through You」にステレオ盤における別ミックスです。 なお、ぼくが持っているアップル・レーベルはSide-1のみレーベルの下部に 「MFD. BY APPLE RECORDS, INC」というクレジットのあるタイプで、71年6月から75年9月にかけて使われたものですが、 「All rights reserved. Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.」 (版権所有。無断で複写すると適用法の違反になります。) という表記がリンゴの絵のうえに記載されたレーベルがあるという情報をMASAさんから提供していただきました。 |
A面はタイトルの上、B面はレーベル右下の部分にこの表記があります。 キャピトル盤のレーベルの変遷については、たいへんにわかりやすくまとめられたMST!さんのサイトが こちらに ありますので、ご参照ください。 さて、新しいアルバムを構想していたビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンが、このアルバムを聴いてショックを受け、
最初の曲作りの段階からやり直して、その結果名盤『PET SOUNDS』が誕生したというのは有名なエピソードですが、
じゃあブライアンが聴いていたのはUKオリジナルなのか、それともUS編集盤どっちなのか、という論争が以前ありましたが、
最近はどうやら「US盤だった」ということで落ち着いたようです。 次は国内盤です。まず初回盤。 |
ジャケットはシングルに戻り、上下に折り返しのあるフリップ・バック、コーティングの施されたいわゆるペラジャケです。
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物品税の改定に伴い定価が1,800円から1,750円に下げられたため、シールが貼られています。 |
レコードはエヴァークリーン・シリーズの赤盤で、インナーは広告の入った「アド・スリーヴ」です。盤の重さは155g。
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今までの国内盤についていた解説がなくなり、このレコードには高橋淳一という人の訳詩がついています。
そのためにリーフレットは4ページになっています。 |
さらにもうひとつ、問題提起をしておきたいと思います。 村上春樹が『ノルウェーの森』という小説を書いたときに、だれもがビートルズの曲からタイトルを取ったと考えたぐらい、
このジョンの曲は「ノルウェーの森」として親しまれてきました。 「あの娘はおれのもんだった/
いやそれとも俺はあの娘のもんだった/ 最後にもう一度出てくる「Norwegian Wood」は「ノルウェー・スタイル愛の朝」と訳してあります。 2回めがちょっと微妙ですが、いずれにしても高橋淳一が「ノルウェーの森」と考えていなかったことだけははっきりしています。 この曲を「ノルウェーの森」と訳すように言い始めたのはいったいだれだったのでしょう。
国内盤LPの発売からほぼ1年後にリリースされた国内盤EPで初めてこの邦題がお目見えしています。 ちなみにぼくが持っているCDの解説ではタイトルは「ノーウェジアン・ウッド(ノルウェーの森)」になっており、
内田久美子という人の訳詩も「彼女は俺を部屋に招いて言った/”ノルウェーの森みたいに素敵でしょ”」 9枚目は86年6月に発売された限定モノラル盤です。来日20周年特別企画と書かれた赤帯つき。 |
オリジナルにはないmonoの白抜きロゴが右上にありますが、これはこれで好きです(笑)。
レーベルはEMI/Odeonで、レコードは赤盤ですが、Odeonの赤盤とは盤質も色も違います。ディスクの重さは125g。 |
なおこの解説では、A-2の曲名は「ノーウェジアン・ウッド」になっていますが、山本安見氏の訳詩は
「とにかく その娘はオレを部屋に呼んだ/ノルウェーの森みたいにシャレた部屋でしょ? どう?」となっています。 最後にご覧いただくのは84年6月にリリースされたモービル・フィディリティー盤です。 |
バラ売りされたモービル盤を見るといろいろ違いがあるなあと感じさせられます。このジャケットはまったく光沢のない
いわゆるUSタイプの厚紙ジャケットです。何年かすればカビが生えてシミもつき、リングウェアも出そうだなと思えてしまいます。
大事にしなきゃ(笑)。 |
レーベルはおなじみのEMIロゴの入ったホワイト・レーベル。上にブラウンでORIGINAL MASTER RECORDINGの文字が入っています。 では今回のオマケ。 箱の表には大変品質の高いジャケットのプリントが貼り付けてあります。 これだけ切り取って部屋のディスプレイにしようかと考えたこともあったくらいです。 |
CD自体は西ドイツ製(そんな国もありましたね!)で、価格は17ドル98セント。 はっきり覚えてませんが当時1ハワイ・ドルは83円ぐらいだったかなあ。 ということは1500円ぐらいですね。安い! |
タイトル・ロゴががUSアナログ盤と同じ色なので記念に買ったのですが、ぼくが初めて買ったCDになりました。
当時はまだCDプレイヤーを持っていませんでしたから(笑)。 |
なお音質評価についてはモービル・フィディリティ・サウンド・ インプレッション/チャプター7をご覧ください。
special thanks to MASA
and Mr. MST!
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