BEATLESのアナログ盤

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SOMETHING NEW


今回はUSキャピトルからのサード・アルバム『サムシング・ニュー』をご紹介します。

それにしてもキャピトルというのはおもしろい会社ですね。
自分たちの不明から、サウンド・トラックの権利をユナイテッド・アーティスツに譲り、 映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』が爆発的に大ヒットすると、慌てて映画の収録曲を配したアルバム (このアルバムですね)をリリースする。
アメリカ有数のレコード会社でありながら、なりふり構わない姿勢には、ユナイトも迷惑したことでしょう。
けっきょく映画の中では使われなかった「ぼくが泣く」を含めて4曲の新曲と、UKのEP盤から2曲、 「抱きしめたい」のドイツ語ヴァージョンをセットしてアルバムとしての体裁を整え、 ちょっと思わせぶりなタイトルとともにリリースしますが、 ユナイトのサウンド・トラック盤に阻まれて、チャートの1位を獲得することはできませんでした。

ではまず、オリジナルのモノラル盤から見ていただきましょう。



1964年7月20日のリリースで、レコード番号はT 2108
スリーヴはおなじみ、光沢のない厚紙によるフロント・シールデッド・スリーヴになっています。
フロント・カヴァーにはアメリカで「エド・サリヴァン・ショー」に出演したときのワン・シーンが使われています。
ぼくはこのジャケット、あんまり好きになれないんですね。
SOMETHING NEW」というロゴは好きなんですけれど、なんだかTVの画面に見立てたような写真と、収録曲をなんの工夫もなく 並べただけの右側……。
UK盤『A HARD DAY'S NIGHT』のLPやEP、ユナイトのサウンド・トラック盤のデザインはどれも好きなんですけれど、 どうしてなんでしょうね、あまり魅力を感じません。
そのデザイナーおよびフォトグラファーのクレジットは、このアルバムにもありません。
バック・カヴァーの解説にも署名がありませんが、最後に「Produced in England by George Martin and in the U.S.A. with the assistance of Dave Dexter, Jr.」のクレジットがあります。

右下の数字は2
レコード・コレクターズ』誌の05年1月号にはこの数字でジャケットの製作地が推定できるという記事が載っています。
それによると「2」はニューヨークの印刷会社で作られ、東海岸のスクラントン工場に送られたということです。



レーベルはレインボウ・キャピトルで、マトリクスはSide-1がT1-2108-T22、 Side-2がT2-2108-G21の1を消して22となっています。
トレイル・オフ(レコード最内周の送り溝の間の部分)に刻まれたマークは三角形の中に「IAM」と書かれたもので、 たしかにペンシルヴァニア州スクラントンのプレスです。
レーベルの、A面を表す数字の 1 I になっているのも東海岸プレスの特徴です。



インナー・バッグは64年当時に使われていた青いカンパニー・スリーヴで、ナンシー・ウィルスンやフランク・シナトラ、 レターメンなどのアルバムが紹介されています。

同じくレココレ誌によると、東海岸プレスの初回盤は、Side-2の5曲目、「Komm, Gib Mir Deine Hand」の作者名のうち、Nicolasが Nicholasと誤記されているそうですが、ぼくの所有盤は正しく訂正されているので、初回盤ではありません……。



このモノラル盤は、UKオリジナル・モノラル盤とミックスの違う「ぼくが泣く」、「アンド・アイ・ラヴ・ハー」、 「Any Time At All」、「When I Get Home」が収められているので、昔から人気の高いアルバムでしたが、 現在では昨年CD化された『キャピトル '64 BOX』で、手軽にその音源を楽しめるようになりました。

つづいてステレオ盤をご覧ください。



レコード番号はST 2108で、フロント・カヴァーの上部にはCAPITOL FULL DIMENSIONAL STEREOという文字と矢印と 「S」の字を組み合わせた大きなロゴが入っています。

バック・カヴァー右下の番号は 6 になっています。
前述のレココレ誌によると、「6」はインディアナ州の印刷所を表していて、西海岸LAの工場用だということです。





ここに載せたのは70年代に再発されたアップル・レーベルで、インナー・バッグはオリジナルかどうか判然としませんが、 白いプレーンなものがついていました。
マトリクスは手書きで、Side-1がST-1-2108-H-13、Side-2がST-2-2108-H-13で、アスタリスク(*)のようなマークがあるので、 記事のとおり、カリフォルニア州ロサンゼルス工場のプレスということになります。
そのほか、Side-1には 7 とも L とも見える活字の刻印があり、Side-2にも同じように 1 または I の刻印が あります。

では、モノラル盤とステレオ盤のスリーヴを比べてみましょう。

まずフロント上部のレコード番号とロゴの部分です。
上がステレオ盤です。
分類用の表記は「File UnderThe Beatles ・Vocal Group」となっていて、 レコード番号との間にある黒い円のマークは、ステレオ盤でもまだ二つに分かれてはいません。



つづいてバック・カヴァー。



ステレオ盤にはFDSFULL DIMENSIONAL STEREO)のマーク、 モノラル盤には「HIGH FIDELITY RECORDING」のロゴがついています。

つづいてスパイン(背表紙)です。



ステレオ盤には白抜きで「STEREOPHONIC」というクレジットが入っています。



バック・カヴァーの下の部分です。 モノラル盤には「このレコードはステレオ・プレイヤーでも再生可能ですが、モノラル盤は今後も、どんなプレイヤーにおいても すばらしいパフォーマンスを披露しつづけることでしょう」というようなことが書いてあります。

なお、『サムシング・ニュー』の収録曲を、UKのオリジナル盤、およびユナイトのサウンド・トラック盤と比較した表を 作ってみました。
タイトルのうち、黄色になっているのが、実際に映画で使われた曲です。
何かの参考になれば幸いです。

originaltitleA
HARD DAY'S
NIGHT
(UA)
(64/06/26)
SOMETHING
NEW
(CAP)
(64/07/20)
UK Album

A
HARD DAY'S
NIGHT
(64/07/10)
A Hard Day's Night-
I Should Have Known Better-
If I Fell
I'm Happy Just To Dance With You
And I Love Her
Tell Me Why
Can't Buy Me Love-
Any Time At All-
I'll Cry Instead
Things We Said Today-
When I Get Home-
You Can't Do That--
I'll Be Back--
UK EP
(64/06/19)
Long Tall Sally--
I Call Your Name--
Slow Down-
Matchbox-
German Single
(64/03/05)
Komm, Gib Mir Deine Hand -
Sie Liebt Dich--



今回の記事を書くにあたり、中山康樹小川隆夫共著、『ビートルズ アメリカ盤のすべて』 (集英社インターナショナル 2004年)、『レコード・コレクターズ』誌(ミュージック・マガジン社) 2005年1月号を参考にさせていただきました。

© 2005 ryo parlophone




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