〜ブートレグCDの金字塔

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ULTRA RARE TRAX』というタイトルのCDが最初にリリースされたのは1988年のことで、西ドイツ(当時)のルクセンブルグに本拠をおく The Swingin' PigTSP )レーベルからだった。
オーナーはディーター・シュバルトという人物で、 「EMIが倉庫のなかに眠らせたままでリリースする気のない貴重なレコーディングを、 テープがダメになってしまう前にファンのみんなが手に入れられるようにするのがThe Swingin' Pig のポリシーだ」
とアメリカの情報誌に語っている。
このシリーズは1991年の『Vol.6』までつづいたが、 すぐあとに出たYellow Dog レーベルの『UNSURPASSED MASTERS』シリーズと併せて、これらのブートがなければ EMIも『アンソロジー』シリーズを出していたかどうかは疑問である。

TSP レーベルのトレード・マーク。
Collect 'em all!」というコピーが泣かせる。

なお、再発時にマーブル・カラーのアナログ盤もリリースされたのでそちらがオリジナルと思っている方もいらっしゃるかもしれないが、 CDがオリジナルである。
また2枚組のアナログ盤『Vol.1 & 2』、『Vol.3 & 4』、『Vol.5 & 6』のなかにはSTASHとかCONDORというレーベルの、 本家の人気に便乗したブートのブート(!)もあるので注意が必要だ。

Vol.1』、『Vol.2』という2枚のディスクには「アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア」 「フロム・ミー・トゥ・ユー」といった初期のナンバーから「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」や 「アイ・アム・ザ・ウォルラス」といった比較的後期のナンバーまでのとてもレアなアウト・テイク、 「How Do You Do It」、「Leave My Kitten Alone」、「If You've Got Trouble」などの未発表曲が併せて24曲、 それもオフィシャル並の高音質で収録されていた。

このCDは西ドイツからアメリカに輸出され、すぐに『ローリング・ストーン』誌でとりあげられたが、 それだけでなくワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズなどの大新聞でも紹介されたために大きな話題になったようだ。

ビートルズのもっとも初期のブートレグとしてはゲット・バック・セッションを収録した1969年の『KUM BACK』という レコードが有名だが、70年代から80年代半ばごろまでは、ブートというと客席の歓声にかき消されてかすかにしか聞こえない ライヴ・コンサートを収録したものがほとんどで、ディスク自体も粗悪なヴィニール盤に刻まれたものが多かった。

ところが88年に忽然と姿を現したこの2枚のブートCDは、プロデューサーのジョージ・マーティンやエンジニアのコールする声、 メンバーが歌詞を間違えたりギターの弦を切ったりするようすがリアルに捉えられていて、ほんとうにビックリしたものだ。

まだタワレコやHMVといった大型CDショップが福岡・天神にもなかったころ、それでもかなり大きなショップで まるで正規盤のように売られていたのを覚えている。

さて、このシリーズは前述のとおりThe Swingin' PigレーベルからVol.6までリリースされているが、 最初の2枚はORIGINAL ULTRA RARE TRAXと呼ばれ、2回再発されている。
まず今回手に入れた1stプレスの2枚のフロント・カヴァーから見ていただこう。
カタログ・ナンバーはそれぞれTSP-CD-001TSP-CD-002で、おそらく3,000枚〜5,000枚程度の限定プレス、 当時の価格は1枚25〜30ドルといったところだった。




Vol.1』がオレンジ、『Vol.2』がグリーンで、いかにもブートらしいシンプルな(笑)ジャケ写だ。

Vol.1』のブックレットの内側。
テイク・ナンバーやステレオ、モノラルの別、またオリジナル・マスターから収録したものとオリジナル・アセテートから 収録したものとの区別が記載してある。
アイ・ソウ・ハー・スタンディング・ゼア」などの初期のタイトルがSTEREOで、しかもオフィシャル並の高音質で聞けるのも 当時としては画期的なことだった。




トレイの裏にあるバック・カヴァー。
曲ごとの詳細が記載されている。

右上の部分を拡大してみた。
オリジナルとの違いがよくわかるように記述されている。

つづいてリ・イシューされたときのフロント・カヴァー。
Vol.3』以降のカヴァーがカラー写真を使ったやや豪華なものになったので、それに合わせて変更されたのだと思う。
おそらく1989年ごろのリリースだと思われる。




フロント・カヴァー以外はすべて1stプレスと同じである。

つづいてディスクを見ていただこう。
左が1stプレス、右がリ・イシューである。




大きな違いはないが、1stにはなかったクレジットが増えている。
まずレッド・ブックに準拠したCDであることを示すCompact Discのロゴ。
それから「SDRM」の四角いロゴ。
そして、「Collect 'em all!」というコピーも加わっている。

なお、右側にあるブタのマークは、アナログ時代にブートで有名だったTRADE MARK OF QUALITYTMOQ )の マークだが、TSPTMOQにどういう関係があるのかはわからない。
少なくともTSPのオーナー、ディーター・シュバルトはTMOQとは無関係だと思うのだが……。
どなたか情報をお持ちの方はご教示ください。

中心の透明な部分には「COMPACT DISC MADE IN W. GERMANY INTERPRESS」という文字が浮き彫りにされている。
またラン・オフ・エリアには「MASTERD BY DADC AUSTRIA」という記載があり、 マトリクスは1st 、2ndともVol.1がINTERPRESS TSPCD-001 12、Vol.2がINTERPRESS TSPCD-002 11 となっている。

さて、長いあいだ廃盤になっていたこの2枚のCDが復刻されたのは、『アンソロジー』がリリースされる直前の1994年のことであった。
Vol.1』『Vol.2』という2枚のCDは画期的であったが収録時間が約30分というたいへん短いものだった。
そこで3rdイシューでは24曲収録のいわゆる 2 in 1 になり、フロント・カヴァーもオリジナルに戻された。
ただし、真ん中で二つに折るリヴァーシブル・ジャケットになっていて、内側は何のクレジットもない。
カタログ・ナンバーもTSP-CD-001/002というものである。




またバック・カヴァーも曲名が並んでいるだけで、詳細な記述はすべてカットされてしまった。

タイトルが『ULTRA RARE TRAX ORIGINAL』に変更され、右側のロゴ・マークも The Swingin' Pigになっている。
マトリクスはCD-001/002 62061XK1である。

最後にこのブート音源の出自についてだが、リリースが1988年ということを考えると、当然マーク・ルーウィソンとの 関係が浮かび上がってくる。
ご存知のようにルーウィソンはEMIの倉庫に保管されている膨大な量のビートルズのセッション・テープを試聴し、 その詳細なメモをもとに『ビートルズ・レコーディング・セッション』という書物を著したが、それが1988年のことだったのだ。
もちろん、ルーウィソン自身が流出にかかわったということはありえないが、EMI内部の人間の介在なしにこれらの音源が 流出することは考えにくい。

ポール・マッカトニーは1990年にアメリカのTV番組で、
「レコーディングが終わればぼくたちはすぐに家に帰ってしまったから、テープがどこにしまわれるかなんて注意していなかったんだ。
だからエンジニアに知り合いがいれば、その人に頼んでスタジオに入れてもらい、コピーを作るなんて簡単なことだったと思うよ。
ミックスを確かめるためのデモ・テープを作ることもよくあったけど、そういったものはそこらへんにほったらかしになっていて、 引越しするときにどこかへ行ってしまったりしてたんだ。
そうなふうにしてテープが流出してしまったんじゃないかな」
と語っている。

このあたりのことは1997年に日本でも出版された『BLACK MARKET BEATLES』 (ジム・バーケンシュタットベルモ著、セバスチャン夏樹訳、バロック出版)にもとづいて記述しているのだが、 ビートルズの歴史に詳しいアレン・J・ウィナーによると、EMIはビートルズの未発表テープに近づいた何人かの社員を 解雇したことがあるという。
ウィナーはルーウィソンにインタヴューした際に、『レコーディング・セッション』の作業中にEMIの倉庫からテープを出し入れする アシスタントのだれかがデジタル・コピーした可能性を尋ねたところ、「そんなことは考えてもみなかった」といいながら可能性については 否定しなかったという。
ULTRA RARE TRAX』の音源流出にEMI内部の人間がかかわっていたことは疑いのないところだろう。

special thanx to Mr.Terada
© 2005 ryo_parlophone




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