BEATLESのアナログ盤

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今回取り上げるのは1966年6月20日リリースのUS盤『Yesterday And Today』です。
このアルバムのファースト・プレスは、「ブッチャー・カヴァー」としてよく知られています。
以前はアーティストの意図を無視して編集盤を乱発するUSキャピトルに対して 不満を募らせたビートルズの4人が、意図的に不快感を催させるようなジャケットを作った、などといわれていましたが、 実際にはカメラマンのロバート・ウィタカーのアイディアだったようです。
2000年に出版された書籍版の『アンソロジー』を読むと、このアイディアをすごくおもしろがっているのは ジョンだけで、ポールとリンゴはウィタカーの意図を図りかね、ジョージはげっそりしていたようです。

このブッチャー・カヴァー、発売の5日前に当たる6月15日に回収されたといわれていますが、 間に合わずに市場に流出したものもあり、それらはファースト・ステイトと呼ばれて驚くような価格で取引されています。
回収されたジャケットはジャクソンヴィル工場ではほとんどが廃棄されましたが、 スクラントンとLA工場では新しいデザインのスリックを上から貼り付けて(セカンド・ステイト)再出荷したため、 それを剥がしたサード・ステイト(ピールド・カヴァー)と呼ばれるものはときどきオークションなどで見ることができます。
残念ながらぼくはカウンターフィット盤しか持っていませんので、MST!さんから本物の画像をお借りして 載せています。
左がサード・ステイトのステレオ盤、右がカウンターフィットです。




廃棄されたブッチャー・カヴァーに代わる新しいデザインのものは俗に「トランク・カヴァー」と呼ばれています。
では、そのモノラル盤からご覧いただきましょう。
シュリンクがついたままなのでフロント・カヴァーの右上にある黒い丸に白い点があるように見えますが、 今までのアルバムと同じです。
その左の表記は「File UnderThe Beatles」。
カタログ・ナンバーはT 2553です。




カメラは同じくロバート・ウィタカーで、ブッチャー・カヴァーに先だつ66年3月23日に撮影されています。
ブッチャー・カヴァーに比べるといかにも凡庸なフォトで、心なしか4人の表情もうんざりしているように見えます。
さらに画像が裏焼であることもキャピトルの慌てぶりを表しているようです(笑)。

US編集盤としては9枚目にあたるこのアルバム、タイトルは素直に読めば「ビートルズの昨日と今日」という意味でしょうが、 バック・カヴァーを見れば一目瞭然のように、大ヒットシングル「イエスタデイ」を中心に、UKオリジナル盤 『ヘルプ!』、『ラバー・ソウル』、そして本国では1か月半後にリリースされる『リヴォルヴァー』から ジョンのペンになる3曲など、全11曲を収めています。
たとえばA面は、オリジナルでは『ラバー・ソウル』のオープニングを飾った「Drive My Car」で始まり、 1曲目と3曲目が『ラバー・ソウル』から、2曲目と4曲目は『リヴォルヴァー』、 5曲目と6曲目は『ヘルプ!』からシングル・カットされた2曲というふうに、かなりとっ散らかった印象を与えます。
選曲をしたのはビル・ミラーという人のようで、「Prepared for release in the U.S.A. by BILL MILLER」 のクレジットがバック・カヴァーにあります。



バック・カヴァー右下の番号は3になっています。



レーベルはレインボウ・キャピトルで、「CAPITOL '66; SOUNDS GREAT!」と書かれた オレンジ色のインナーバッグに収められていました。
マトリクスは機械打ちで、Side-1がT 1-2553-G8 #2、Side-2がT 2-2553-F7 #3で、 三角形の中にIAMと書かれた刻印のあるスクラントン・プレスです。

ではつづいてステレオ盤をご紹介しましょう。
カタログ・ナンバーはST 2553となります。




フロント・カヴァーは上にNEW IMPROVED FULL DIMENSIONAL STEREOのロゴ・マークがあるので、 ポールの足元の画像が切れてしまっています。
バック・カヴァー右下の番号は6




レーベルはレインボウ・キャピトルですが、俗に「SUBSIDIARY CAPITOL レーベル」と呼ばれているもので、 69年6月から9月までのわずかな期間にプレスされたものです。
このあとはグリーン・キャピトルと呼ばれるレーベルに変更になります。
マトリクスはA面がST 1-2553-B6、B面がST 2-2553-A3 #2で、 これも三角形の中にIAMと書かれた刻印があるのでスクラントン・プレスです。
レインボウ・キャピトルではA面を表す「Side-1」の「1」が「I」になっているのが 東海岸プレスの特徴といわれていますが、SUBSIDIARY レーベルになるとこの原則は当てはまらないようです。

インナーは白いプレーンなものですが、おもしろいことに右上に前のオーナーとおぼしき人が書き込んだ日付があります。
S45.4.7。日付から考えると、アメリカから輸入された新品を1970年4月に購入したのでしょう。
もしそうだとすると、SUBSIDIARY レーベルではホワイト・インナーがオリジナルという可能性が高くなると思います。

では2つのレーベルを比べてみましょう。




左がオリジナル、右が再発盤で「A SUBSIDIARY OF CAPITOL〜」というクレジットがあります。

もう1枚、SUBSIDIARY レーベルのステレオ盤をご紹介しておきます。

上のものと比べると、スピンドル・ホールの上に「Recorded in England」という表記がありません。
こちらはアスタリスクのようなマークがあるので、西海岸ロサンゼルス工場のプレスです。
マトリクスは手書きで、Side-1がST-1-2553-B-18、Side-2がST-2-2553-B-18で、 4時の方向に「2」の刻印があります。
やはり白いプレーンなインナーに収められています。
こちらもバック・カヴァー・ナンバーは6です。


つづいてアップル・レーベルのステレオ盤を1枚ご覧いただきましょう。

ジャケットなどは変更がないので省略しますが、71年から75年までの間にリリースされたアップル・レーベルで、 マトリクスはやはり手書き、Side-1がST-1-2553-A-17、Side-2がST-2-2553-B-16で、 両面とも4時の方向に「2」の刻印があります。
こちらもアスタリスクのようなマークがあるので、西海岸ロサンゼルス工場のプレスです。
インナーバッグはこれも白いプレーンなものです。


バック・カヴァー左下には「FOR EXPORT ONLY」の青いシールが貼ってあり、右下には18という数字があります。



ぼくはジョンの書いた「I'm Only Sleeping」が大好きで、この曲のミックス違いをすべて揃えるためには UK盤『リヴォルヴァー』のモノラル盤、ステレオ盤、そしてUS『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』の モノラル盤、ステレオ盤の4種類を揃えなければなりません。
SUBSIDIARY レーベルのステレオ盤は擬似ステレオでモノラルと同じミックスなので、後期のアップル・レーベルを オークションで手に入れたのですが、やはり擬似ステレオでした……。
マトリクスを見ると、同じLA工場なのにアップル・レーベルのほうがSUBSIDIARY レーベルより数字も記号も若いようなのです。
アップル・レーベルのリアル・ステレオ音源ってないのでしょうか(涙)。

では最後に、ブッチャー・カヴァー関係のサイトをご紹介しておきます。
たくさんあると思うのですが、SONGS, PICTURES AND STORIES OF THE BeaTLeSは、 フォト・セッションやプライス・ガイドなども載っていて楽しめます。
ちなみにファースト・ステイトのステレオ盤はVGコンディションで$3,000、ニア・ミントなら(あるのか?)$7,000、 サード・ステイトでもニア・ミントなら$3,000、というのが2000年ごろの米国での相場のようです。
1986年にロサンゼルスのビートルフェスタに出品されて話題になったリヴィングストン・コピーについての解説も ありますので、フォト・セッションからの別テイクと合わせて、2枚だけ画像を載せておきます。
右側の画像は本物かどうかわかりませんが、これを見ると「ああ、ぼくの父親がアラン・リヴィングストンだったらなあ……」 とマジ思いますよね(笑)。
気になる人は上のリンクをクリックしてください。




参考文献:『アンソロジー』リットー・ミュージック 2000年
レコード・コレクターズ』誌 1996年4月号、2005年1月号 ミュージック・マガジン
中山康樹、小川隆夫共著、『ビートルズ アメリカ盤のすべて』(集英社インターナショナル 2004年)

special thanks to Mr.MST!
© 2005 ryo_parlophone




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