紙ジャケCDの誘惑
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Chapter 2 "Deja vu"
by Crosby,Stills,Nash & Young
original : US ATLANTIC SD 7200, Mar.1970
paper sleeve : east west japan AMCY-2726, May 29,1998 |
新コーナー「紙ジャケCDの誘惑」にようこそ。
イントロダクションにつづいて最初に取り上げるのはやはりこれしかない。
クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの『デジャ・ヴ』である。
今でこそ高校生も普通に使う「デジャ・ヴ(既視感)」という心理学用語をタイトルにしたこのアルバム、
しかし当時は紛れもなく斬新なサウンドだった。
そして35年後の今もなお聞き継がれるべき、20世紀を代表するロック・アルバムの1枚だ。
1969年、レコード・ショップで買おうかどうしようかと迷ったアルバムが2枚あった。
1枚は『レッド・ツェッペリン登場』、もう1枚は『クロスビー・スティルス&ナッシュ』、いずれも
アトランティック・レーベルからリリースされたものだった。
2枚とも当時流行したスーパー・グループということで、レコード・ショップでも目につくところに展示されていた。
アトランティックの新しい戦略だったのだろう。
けっきょくそのときは両方とも購入せず、翌70年の春と夏に購入したのが『レッド・ツェッペリンU』であり、
『デジャ・ヴ』である。
いずれも、「胸いっぱいの愛を」、「ウッドストック」というシングル曲をラジオで聴いたのがきっかけだった。
当時は音楽情報も今と比べれば極端に少なく、やはりシングル・ヒットがアルバムの購入動機に結びついていたのだ。
ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ザ・ホリーズという、英米を代表する、
コーラスの美しいロック・グループ出身のスーパー・グループというのがキャッチ・コピーだったが、
ぼくは「ウッドストック」のイントロのギターにやられてしまった。
さっそく家に帰って聴いてみると、A-1の「キャリー・オン」からすごい。だれが主旋律でだれがコーラスか分からないような
見事なハーモニーが組曲風の複雑な構成のなかで最後まで曲を引っ張ってゆく。
こんな曲は今まで耳にしたことがなかった。
映画『小さな恋のメロディー』の挿入歌として使われた「ティーチ・ユア・チルドレン」、
映画『ウッドストック』の挿入曲というより、あの時代を象徴する「カット・マイ・ヘア」、
ニール・ヤングの代表曲のひとつである「ヘルプレス」など、名曲ぞろいだが、
タイトル曲「デジャ・ヴ」もとても印象深い曲だ。
デイヴィッド・クロスビーのつぶやきから12弦ギターの6/8拍子の印象的なイントロが始まり、
息もつかせぬようなハーモニー・ヴォーカルが一転してゆったりとしたリズムに変わると、
コーラスはハミングとなり、
ジョン・B・セバスチャンのハーモニカと、スティーヴン・スティルスのトーンを絞ったモコモコとした
リード・ギターによって、眩暈を覚えるような既視感の世界が驚くほど巧みに捉えられてゆく。
最後の「We have all been here before」の繰り返しも効果的だ。
いけない、紙ジャケの紹介だった(笑)。
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『デジャ・ヴ』は1998年5月にイーストウエストジャパン(ワーナーミュージック)からリリースされた。
カタログ・ナンバーはAMCY-2726で、アトランティック50周年を記念した「ATLANTIC MASTERPIECE オリジナル・ジャケット・
コレクション」の1枚として発売されている。HDCD仕様である。
このシリーズにはほかに、オーティス・レディングの『ドック・オヴ・ベイ』、
ヴァニラ・ファッジの『キープ・ミー・ハンギング・オン』、
それに『マクドナルド・アンド・ジャイルズ』などもあったが、購入したのはこの1枚だけ。
このCDだけを見ているとなかなかよくできたジャケットで、シワシワ?などもよく再現しているようにみえる。
けれども実際にアナログ盤と比べてみると、やはりその質感の違いはかなり大きなものだ。
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下の写真は、左がアナログで右側が紙ジャケ。
アナログ盤のほうは、70年に日本グラモフォンからリリースされた国内盤で、発売当時のタイトルは『セカンド・アルバム』だった。
リリースは70年7月のはずだが、歌詞カードの裏に記入した日付は70年6月27日になっているから、おそらく発売当日あたりに買ったのだろう。
レコード番号はMT 2023。
ゲイトフォールド・ジャケットで、写真では黒に見えるが、深いブラウン系のジャケットに
タイトルやアーティスト名を金箔で押したような豪華な仕様だ。
紙ジャケのほうは、やはり厚紙を使ったゲイトフォールドだが、ずいぶん色が薄くなり、
タイトルなどもベージュ系のインクによって印刷されたものである。
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メンバー4人のほかに、ベースのグレッグ・リーヴスとドラムのダラス・テイラーも写ったジャケット写真は、
アナログ盤では落ち着いた色調で、別の紙にプリントしたものを表に貼り付ける形になっている。
紙ジャケはセピア色というよりはワインレッドのような色で、これはジャケットの厚紙にじかに印刷されている。
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ゲイトフォールド・ジャケットの内側。紙質が違っていて、紙ジャケのほうはなめらかな紙に印刷されているので、
写真もなんとなく趣きのないものになってしまった。
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レーベル。アナログ盤は日本グラモフォン特有のライト・グリーンとシアンのアトランティック・レーベル。
CDは緑と赤の国内盤CDではおなじみのアトランティックのレーベルになっている。
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このCD、オークションなどではかなりの高値がついているが、もう少しオリジナルにこだわった再発を願いたいものだ。
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