紙ジャケCDの誘惑


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Chapter 16 'OUT TO LUNCH!'
by ERIC DOLPHY


original : BLUE NOTE BST 84163, 1964
paper sleeve : TOSHIBA-EMI TOCJ-9079, Jan. 27,1999

紙ジャケの歴史はJAZZから始まったといっていいので、遅ればせながら1枚紹介しておこう。
東芝 EMI のBLUE NOTE 24bit by RVG シリーズからエリック・ドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』である。
ジャズを熱心に聴いていたころドルフィーに夢中になっていたことがあった。
とにかく2〜3日聴かないとドルフィーが聴きたくてたまらなくなって禁断症状のようになる。
大学を卒業して就職試験を受けるときに世田谷の従兄の家に1週間ばかり泊めてもらったのだが、 やはり禁断症状が出て、聴きたくて聴きたくて就職試験どころではない(笑)。
下見もそっちのけで渋谷あたりのジャズ喫茶をうろうろしながら、ドルフィーをリクエストしたのを思い出す。
(ちなみにマイ・ブログのプロフィールの写真がドルフィーです。)

さて、ドルフィーはブルー・ノート・レーベルにたった1枚だけリーダー・アルバムを吹き込んでいる。
それがこの『アウト・トゥ・ランチ』である。
ジャケットも秀逸だ。
淡いブルーに彩色されたモノクロームの写真にはオフィス街の事務所らしい建物のドアが写っている。
ブラインドが半分下りていて奥には「WILL BE BACK」という時計を描いた札が下がっているのだが、 針がいくつもあるので、いったいいつランチから戻ってくるのかわからない。
いかにもシュールな感じで、素晴らしいジャケットの多い BLUE NOTE のアルバムのなかでもとくに好きな1枚だ。

ではまず、USオリジナル盤から見ていただこう。




バック・スリーヴの左上にブルー・ノートのロゴ・マークがプリントされているので1stプレスではない。
おそらく2nd プレスあたりだろう。




レーベルの住所が「NEW YORK USA」になっているのが4100番台の特徴だ。
ラン・オフ・エリアには、レコーディング・エンジニア RUDY VAN GELDER の刻印がある。

つづいて、1983年にキング・レコードから復刻された国内盤をご覧いただきたい。




バック・スリーヴの上部を見ると左に「STEREO」、右に「BLUE NOTE ST-84163」とプリントされているが、 おそらくこれがファースト・プレスの仕様なのだろう。

それにしても帯の惹句がすごい(笑)。
「《特別復刻盤・特製重量レコード》ブルーノート復刻のこれは完璧な"芸術品"です」とある。



『ブルー・トレイン』や『サムシン・エルス』、『モーニン』など15タイトルがこのシリーズでリリースされている。
帯を見るとレーベルや内袋も復刻されたことがわかる。




そのレーベルと内袋である。

なんだ、ふつうの国内盤のレーベルと変わらないじゃないか、と思う方もいらっしゃるだろう。
よ〜くご覧いただきたい。
国内盤には必ずあるJASRACのマークがないのである。
じつはこれ、ラン・オフ・エリアに刻印してあるのだ。

ここまでやるか?という感じである。

せっかくだからオリジナル盤と比べてみよう。
まずフロント・カヴァー。



左上の鮮やかなブルーがオリジナルで、右のややくすんだ色合いのジャケットのほうが国内盤である。




スパインのクレジットはほぼ完璧。



先ほど触れたバック・カヴァー上部の表記の違い。



国内盤もバック・カヴァー右下には「Printed in U.S.A.」とある。
いいのかな?(笑)
でもせっかくバック・シールデッド・スリーヴを再現しているのに、その紙が大きすぎていかにも国内盤然とした "スキのない"作りになっているのが残念だ。

いや〜、思わず国内復刻盤に力が入ってしまった。
やっと紙ジャケです(笑)。




BLUE NOTE 24bit by RVG シリーズは1998年7月23日に第1期の第1回(全20タイトル)が発売され、 現在までに4期全350枚がリリースされていると思う。

この東芝のブルー・ノート・シリーズが画期的だったのは、ひとつは当時のレコーディング・エンジニアであった ルディー・ヴァン・ゲルダーを引っ張り出してきてリマスタリングさせたことである。
ブルー・ノートの音を作ったというより、ジャズ・レコードの音を作ったといってもけっして大袈裟ではない 伝説のエンジニア、R.V.G.の起用は当時大きな話題になった。

もうひとつは紙ジャケにヴィニール・コーティングを採用したことだ。
今ではごく当たり前の仕様の一つになった、ラミネート・ヴィニール・コーティングだが、 東芝がこのシリーズで採用するまでどこもそんな金のかかる紙ジャケを考えたりはしなかった。






もっともすべてのシリーズにコーティングを施したこと(『アウト・トゥ・ランチ』のオリジナルって、コーティング・ジャケット なのかな?)と、バック・カヴァーまでツルツルのピカピカにしてしまったのには、ちょっと異議を挟みたくなるけれど……。

レーベルはR.V.G.のクレジットがプリントされてるのがご愛嬌だが、もちろんインナーはまだ復刻されない時代だった。

では最後に音質に関するインプレッションである。
まずオリジナル盤は、これぞR.V.G.という感じでたいへん鮮度の高い音だ。
ボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォンがきらめきを持って響きわたり、ドルフィーのバスクラもハバードのトランペットも 目の前で吹いているようにリアルに浮かび上がる。
キング復刻盤は、これにくらべると一歩も二歩も鮮度が後退する。
一般的に音がよいといわれているキングのブルー・ノート盤だが、このレコードに関する限りあまり感心しなかった。

紙ジャケは両者の中間という感じ。
例によって、オリジナルの左右に広がるステレオ音場ではなくて、真ん中に小さく集まるリミックスが行われている。
ぼくはこのR.V.G.によるデジタル・リマスタリングがそんなにみんながいうほどいいとは思えないのだが、 このアルバムのばあいはなかなかよくできていると思う。
とくに低音好きのぼくにとって、オリジナルよりかなりベースが躍動感あふれる感じになっているのはうれしいところだ。
ただベールを1枚剥がしたようなオリジナルのリアルな印象には及ばなかった。

2005/10/24 追記
昨日UPしてから気がついたんだけど、紙ジャケの最下部、ブルー・ノート・レコードの住所表記部分で、 「New York 23」の、「York 23」が落ちてしまっている。
2nd プレス以降は訂正されているんだろうか。




© 2005 ryo_parlophone




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