紙ジャケCDの誘惑


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Chapter 10 "風街ろまん"

by はっぴいえんど


original : URC RECORDS URG-4009, Nov.20, 1971

paper sleeve : TOSHIBA EMI TOCT-10457 Sept.30, 1998

 (Box set) avex IOCD-40051-8, Mar, 31, 2004


今回は初の国内アーティスト、はっぴいえんどを取り上げる。
以前、職場の同僚のAさんから「はっぴいえんどってどんなメンバーだったんですか」と尋ねられたことがある。
Aさんはぼくよりひと回り下なので、「ヴォーカルとギターが大瀧詠一、ヴォーカルとベースが細野晴臣、 ヴォーカルとリード・ギターが鈴木茂、ドラムが松本隆」 と答えると、「すっげえメンバーですね!」と目を丸くしていた。
そう、すっげえメンバーだったのだ。でも、当時はいくつもあるロック・バンドの一つだった。
ただし印象はやたら鮮明だった。
ボブ・ディランがポール・バタフィールド・ブルーズ・バンドを率いてニューポート・フォーク・フェスティヴァルで 観客を騒然とさせたように、岡林信康ははっぴいえんどをバックに使って日本のフォーク・ファンをびっくりさせた。 ぼくのなかではそういうイメージである。
そしてラジオで初めて彼ら自身のシングル「12月の雨の日」を聴いたときの胸の震えは今でも忘れられない。
その鮮烈な詩と、鈴木茂の、デヴュー当時のニール・ヤングを思わせるような抒情味あふれるギター、大瀧詠一の繊細なメロディー。 すぐにぼくは彼らのファースト・アルバム『はっぴいえんど』、通称「ゆでめん」を買った。

彼らが初期にめざしていたものはバッファロー・スプリングフィールドのような音楽だった。
いわれてみてなるほどと思うのだが、そういえば大瀧のヴォーカルにはスティーヴン・スティルズの影響もある。
ぼくがはっぴいえんどの音楽に敏感に反応したのもそのあたりにあったのだろう。
今から思うと松本隆ははっぴいえんどで作詞の才能を開花させ、あとはそれを商業的に使いまわすことによってプロの作詞家として 活躍してきたに過ぎないような気がする。それほどはっぴいえんど時代の松本の詩は鮮烈だった。
当時いちばん好きだったのは「はいからはくち」。最初に大瀧が「Hi, this is Bannai Tarao. High color is beatuiful.」 と流暢な英語で口上を述べ、「ハイカラ白痴」と思わせておいて、歌が始まると「ぼ〜くははいか〜らち〜をはきながら〜」、 「おおー、『肺から吐く血』か! ダブル・ミーニングだ、ジョンみたいだ!」と感動したものです。
そして大瀧も細野も次第にその音楽的嗜好の違いを明確にさせながら、独自の世界を目指していった。

ではまず、オリジナル盤と東芝からリリースされた紙ジャケを見ていただこう。



真っ白なバックに4人の肖像をイラスト風にあしらったジャケットは漫画家宮谷一彦の作。
ぼくはビートルズの『レット・イット・ビー』のパロディーだとばかり思っていたのだが、 後述するボックス・セットのブックレットを読むと、当時好きだった『ミート・ザ・ビートルズ』をイメージしたと述べている。 いずれにしてもビートルズだったわけだが。
そしてSide-1の1曲目が「抱きしめたい」。もちろんレノン・マッカートニーの作品ではなくオリジナルである。
スリーヴはゲイトフォールドになっている。

オリジナル盤の帯に記載された注意書き。
「レコードお買い上げの後はただちにこの"タスキ"を破って捨ててください」
そう、ぼくらにとって帯とは、アーティストの芸術性とは相容れない、商業主義の表れた邪魔モノだったんだよね。
ぼくが今持ってるのはずいぶん後になって手に入れた中古だが、帯を破って捨てなかった最初のオーナーに感謝している(笑)。
なお、この注意書きは東芝の紙ジャケでも忠実に再現されている。




オリジナル盤と紙ジャケのバック・スリーヴである。

つづいて昨年エイヴェックスからリリースされた『はっぴいえんどBOX』の『風街ろまん』を見ていただこう。



ボックスはあとでご覧いただくようにたいへんな力作だが、帯がついていないのと、ペイパー・スリーヴがひと回り小さく、 しかも訳のわからないコーティングが施してあるというのが残念なところだ。



3枚のジャケットを並べたところ。
エイヴェックスのものは色味をよく再現しているが、コーティングでぴかぴかである。
東芝は独特の手触りをもつマット紙のようなジャケットで、色もずいぶん違う。



ゲイトフォールドの内側。宮谷一彦が描く、松本隆の詩の世界。どちらもよくオリジナルを再現している。



付属の歌詞カード。シュールレアリスムの手法を取り入れるなど多彩な松本の詩の世界を表すために、手書きになっている。



レーベルはピクチャーで、東芝のCDはこだわって再現している。なにしろ曲名がA面の6曲だけになっているぐらいだ(笑)。

それではここから、昨年3月31日にリリースされた8枚組の限定ボックス・セットをご覧いただこう。



まず外観はこんな感じ。



左はボックスの外観である。イラストは『ピンポン』で有名になった、松本大洋
賛否両論あったが、ぼくはやはり、あまりはっぴいえんどの世界とマッチしているとは思えない。 右側はボックスの蓋を開けたところ。



蓋とボックスの本体はつながっており、限定番号が入っている。
ブックレットは布装で192ページもあるたいへんな力作だが、どこか自費出版の句集みたいだ、と以前日記に書いたのを 覚えていらっしゃる方もいるだろう。



豊富な写真と北中正和による「はっぴいえんど論」、4人へのインタヴュー、スタッフ・インタヴュー、歌詞、年表、 ディスコグラフィーなどを収める。
このボックス・セットには川勝正幸をはじめ、高護、湯浅学、長門芳郎、萩原健太、はっぴい・ファンとして有名な佐野史郎、 前述の北中正和、松本大洋など多くの人がかかわっている。



さて、なかみを全部並べるとこうなる。

もう何が言いたいかおわかりだろう(笑)。
米キャピトルよ、ビートルズのボックス、これぐらいの作れよ!
お願いします。

つづいておまけ。ボックス・セットについていたものだ。



シンコー・ミュージックが出版した『はっぴいえんど全曲楽譜集』の復刻版である。
表紙のイラストは矢吹伸彦。こちらのほうがやっぱりはっぴいえんどにはしっくりくるような気がする。

中味はこんな感じ。



これはいらなかったなあ(笑)。

最後に音質について述べる。 まず、オリジナルのアナログ盤だが、これが圧倒的に音がよい。
今回、ブックレットのスタッフ・インタヴューを読んでわかったのだが、当時最新鋭の16トラックを導入したヴィクター・スタジオで、 梅津達男、吉野金次というエンジニアといっしょに音を作っていったのだ。
低域は厚いがタイトで、中域がじつに迫力のある音で録れている。
CDはとくに最新のエイヴェックスのものは高域がすーっと伸びて、ハイファイなのだが、音の迫力という点ではやはりアナログには叶わない。



© 2005 ryo parlophone




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