紙ジャケCDの誘惑


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Chapter 11 "ON THE BEACH"
by NEIL YOUNG


UK original : K 54014, July, 1974
paper sleeve : 9362-48526-2 , July 21, 2003

さて、今回はニール・ヤングを取り上げる。
昨年2月11日に国内盤がリリースされるとアナウンスされたものの、なぜか発売中止になってしまった、リプリーズ 時代の紙ジャケ4タイトルのなかから74年の名作『オン・ザ・ビーチ』である。

70年の『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』、72年の『ハーヴェスト』という2枚のアルバムが圧倒的な共感をもって迎えられ、 さらに後者からシングル・カットされた「孤独の旅路」が全米第1位を記録したために、 ニールは「道の真ん中(MOR)に引き出されて」しまい、 以降ヒット作を強要するレコード会社との長い確執を招くことになってしまう。
73年に制作したものの、そのあまりに暗く重たい内容から発売延期を余儀なくされた『トゥナイツ・ザ・ナイト』に 代わる作品としてリリースされた『オン・ザ・ビーチ』は、それでもやはり『ローリング・ストーン』誌から 「この10年のなかでもっとも絶望に満ちた作品」と評価されてしまう。
でも、英語の詞をじゅうぶんには理解できないせいかも知れないが、ぼくはこの作品にあまり暗さや絶望を感じない。
たしかにタイトル曲「on the Beach」の重たいリズムと苦悩をにじませるようなヴォーカルには、 70年代の「Down by the River」とでも呼びたいような、陰鬱な響きがある。
しかし、その直後の「Motion Picture」や、アルバム冒頭の「Walk on」には、 確固たる自信とゆとりからくるリラックスした趣きが感じられる。
ストレイ・ゲイターズや盟友クレイジー・ホース、さらにはザ・バンドのリック・ダンコリヴォン・ヘルム といったゲストたちを交え、自分の信じる道を再び歩き始めるニールの姿がここにあると思う。

では紙ジャケの前にUKオリジナル盤を見ていただこう。
(本来ならUS盤がオリジナルだと思うが、ぼくは所有していない)




スリーヴはコーティングのないペラジャケで、人気のない砂浜、どこか陰鬱な海と空、 ビーチ・パラソルと砂に埋もれた車(キャデラック?)、 鉢植えの植物など、なんとなく物語の終わり、ひとつの夢の終焉を思わせるようなジャケットだ。
表にはタイトル、裏にはアーティスト名と曲目だけがクレジットされている。




レーベルはリプリーズで、ジャケットの内側にはアロハ・シャツを思わせるような鮮やかなフラワー・プリントが施されている。




インナー・バッグも薄い紙製で、片方にはこのセッションでスライド・ギターと とても印象的なフィドルを演奏しているRusty Kershawという人の、このアルバムに対する賛辞が、 もう片方には1曲ごとのパーソネルが、それぞれ砂に埋もれた紙片に記載されている。

ではつづいて紙ジャケを見ていただこう。




UKアナログ盤のタイトルやアーティスト名が紫に近い色だったのに対し、こちらの紙ジャケのほうはコバルト・ブルーに なっている。

一昨年(2003年)の夏にヨーロッパでリリースされた紙ジャケで、「Made in Germany」のクレジットがある。



インナー・バッグも再現されているが、砂浜の砂にかなり色が載ってしまっている。




CDのレーベルはゴールド・リプリーズとでも呼びたいような、金ぴかのレーベルである。
スリーヴ内側のアロハ・プリント?もきちんと再現されている。
ただし、UKアナログ盤と比べるとどうも天地がさかさまになっているようだ。

では、最後にサウンドについて述べておこう。
UK盤は、楽器やヴォーカルのそれぞれのソノリティを引き出すというよりは、全体が塊となって迫ってくるような 迫力のある音作りがされたようだ。
ニールの声もほかの楽器とブレンドされて、混然としたサウンドのなかに、バンドのリラックスしながらも真摯な演奏が 伝わってくるようで、Side-1、3曲目におけるリヴォン・ヘルムの力の漲るドラムスも印象的だ。
そしてCDはアナログの雰囲気をよく伝えていると思う。
全体的な迫力はやはり少し抑えられた感じで、楽器やヴォーカルもきれいに響くが、CDだけ聞いている分にはまったく 不足はないと思う。



総合的には大変によく出来た紙ジャケだと思う。
せめてUSキャピトルにもこれぐらいの仕事をしてほしいものだ。
(え?いつも最後はそれかって? あはは。そうですね…。)

© 2005 ryo_parlophone




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