紙ジャケCDの誘惑


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Chapter 9 "truth"
by jeff beck



original : UK Columbia SCX 6293, Aug. 1968
paper sleeve : 1st issue TOSHIBA EMI TOCP-50846, May 27, 1998
         2nd issue TOSHIBA EMI TOCP-67688, May 25, 2005


<1st イシューに対するインプレッション>
まずはこの美しいジャケットをアナログ盤と紙ジャケCDで見比べていただこう。




左がUKコロンビアのアナログ(ただし再発)盤で、ヴィニール・コーティングが施されているので 写真を撮るぼくの姿が映りこんでしまっている。…すみません。右は紙ジャケ。

中央にレイアウトされたこの美しい写真(一見絵にしか見えないが)を見ると「ミル・ヴァレーの少女」という、 ニッキー・ホプキンズの美しいインストゥルメンタルを想い出してしまうが、 その曲が入ってるのは次の『ベック・オラ』のほうだ。 でも、部屋に1枚だけレコード・ジャケットを飾るならこのアルバムですね。
もったいなくて飾ってないけど(笑)。
「Front Cover Photograph : Stephen Goldblatt」のクレジットがある。



告白すると、中学1年でクリームの「ホワイト・ルーム」に完璧にノックアウトされてから、ジェフ・ベック、そして 高校1年の夏に『ゼッペリン U』という具合に、3大ギタリストに順にやられてしまったのである。
恥ずかしい話だ。
アルバムとしては次の『ベック・オラ』のほうが優れていると思うけれど、ベック(g)、ペイジ(12st-g)、 ホプキンズ(p)、キース・ムーン(ds)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b)という、オリジナル・レッド・ゼッペリン ともいうべき布陣で演奏される「ベックス・ボレロ」、ペイジもゼップのファーストで取り上げたマディ・ウォーターズの 「You Shook Me」、ワウがかっこいいウィリー・ディクスンの「迷信嫌い」、そして7分半にも及ぶ「Blues De Luxe」など、 ブルーズ・ロックの真髄ともいえる名演が多いので、ジャケットの美しさとともに愛聴盤だった。

あまりにも個性的なベックの陰に隠れてしまうけれど、ロン・ウッドのベースはけっして悪くないし、なんといっても ロッド・ステュワートのヴォーカルがソウルフルかつパワフルで、個人的にはロバート・プラント(ゼップ)、ポール・ロジャース(フリー)とともに 70年代3大ブリティッシュ・ロック・ヴォーカリストだと思っている。

ジェローム・カーン(!)の「Ol' Man River」にもティンパニでキース・ムーンが参加しているのだが、契約上匿名になっていて、 クレジットは「You Know Who」(笑)。おしゃれ。



紙ジャケは98年の5月という、東芝EMIとしては最初期のものなので、オリジナルとは違ってヴィニール・コーティングのない 厚紙のスリーヴだ。
ソニー・ミュージックが米コロンビアの商標を使えない(使わない?)のと同じように、東芝EMIも英コロンビアの商標を使えないから 左上のマークが淋しい。
ちなみにアナログのスリーヴはGarrod & Lofthouse製で、裏はコーティングが施されていないタイプだ。
オリジナルはフリップバックだった。



CDはスリーヴの作り方も、現在の水準からみるとオリジナルに忠実とはとてもいえない。
表ジャケ用のペーパーを裏で折り返して、そこに裏ジャケ用のペーパーを貼る、いわゆるバック・シールデッド・スリーヴに なっている。

ただバック・カヴァーはなかなか忠実な部分もある。
たとえばビートルズのUK盤ではおなじみのE.M.I RECORDS − HAYES・MIDDLESEX・ENGLANDという表記や、NEW EMITEXの広告、 アナログ盤の回転数を表す33 1/3 R.P.M.などはそのまま表記されている。

右下の写真は「File Under POPULAR : Pop Groups」……米キャピトルと同様の表記だ。
英コロンビアにもこういうクレジットがあったというのは、今回MASAさんに教えていただいた。




背表紙。
フォントはオリジナルと同じものを使っていて好感が持てるが、なんと大きさがほぼ同じ!
これじゃあバランスが悪いでしょう。
それにフロント・カヴァーにあたる部分だけ黒でその周囲を白にするのが面倒だったのか、スパイン(背表紙)の部分を 含めて全部黒く印刷して裏に折り返しているために、文字が白抜きになっている。


CDのレーベルもいただけません。
なんでこうなるの?
アナログ盤は再発盤とはいえ由緒正しい2 boxed EMI logosですよ(笑)。
98年ごろはそこまでこだわってなかった?
いやいやブルーノート・レーベルはしっかり復刻してましたからね。
さて、同時にリリースされた『ベック・オラ』のほうは2004年12月22日に最新リマスター、ボーナス・トラックつきで 再発されることが決まっている。
ここは『トゥルース』もぜひ、新しくリリースしなおしてほしい。
今度はオリジナルに忠実にね。
たのんますよ、東芝EMIちゃん。



<以下2005年5月28日追記>

さて、その後順調に紙ジャケリリースが進み、ジェフ・ベックのおもな作品は紙ジャケ・リマスターCDで聞けるようになった。
あとは『ロジャー・ジ・エンジニア』だな。
ユニヴァーサル・ミュージックさん、頼みますよ。

「DAYS OF MUSIC & MOVIES」にも書いたけれど、 丸7年という歳月を隔ててリリースされた新旧2種の紙ジャケを眺めていると、 とうとうここまできたかという感慨を抱かずにはいられない。
しかし細かいところを見るとけっして100点満点の復刻というわけでもない。
そういう微妙なところもちょっと指摘しておきたい。
では具体的に見ていこう。



まずフロント・カヴァーはヴィニール・コーティングが施され、もともと美しいジャケットをさらに引き立てている。



jeff beck truth という文字は少しだけ色が濃くなり、右上のEMIのロゴはオリジナルどおり白抜きになった。
もちろんコロンビアのロゴは復活していないけれど。

スパインはちゃんと白地になり、上下には絞りがある。
しかしカタログ・ナンバーはCDのもの。


バック・カヴァーは上下に折り返しのあるフリップ・バックだが、じつはこれもオリジナルどおりではない。
1stプレスは68年だからまだ3方の折り返しで、上下2辺になるのはレイト・プレスだ。
これはおそらくリサーチ不足ではなく、コスト削減のための確信犯的な処置なのだろう。
たしかに紙ジャケでは上下の折り返しと3辺の折り返しは微妙な差でしかない。
しかし、こういうところにこだわるのが紙ジャケではないだろうか。

File Under 〜」はオリジナルどおりフリップの上に載っかっていて、 カタログ・ナンバーもオリジナルのものになっている。

今度は右下のクレジット部分を見てみよう。



6811 TPS」というクレジットやステレオとモノラルのカタログ・ナンバーはオリジナルどおりだが、 ギャロッド社のクレジットの部分は 「Printed and made in Japan」になっている。
コロンビアのロゴがあるところにはEMIのロゴ。
これも仕方のないところだろうがなんか中途半端なんだよなあ。



レーベルは1 EMI ボクスト・ロゴを思わせるCD独自のレーベルになっている。
前作よりはずいぶんマシになったと評価すべきなんだろうか(なんだろうね)。

そして各社が可能な限り復刻を心がけ、東芝EMIでもオフ・コースでは実現したインナー・バックは 残念ながら復刻されなかった。
UK盤プラケについていてすばらしいと評判を呼んでいるブックレットもなし。
これで2,600円はちょっと高いかなあ。



帯は国内初盤をイメージしたものだが、リアル・タイムのファンとしては、やはり 「驚異のブルース・ギター ジェフ・ベック登場!」にしてほしかった!

さて、最後に気になる音質について印象を述べておこう。
アナログ盤は2 EMIとはいえ、マトリクスの枝番もマザーも両面1なので、かぎりなくオリジナルに近いと思う。
そのせいか、すごく実在感のある音だ。
このころのベックのギターはレス・ポールだと思うが、じつにリアルでスリリングに鳴る。
ロニーのベースもやや控えめながら、気持ちのいい音でがっちり下を支えているし、 ロッドのヴォーカルは独特のくすんだ感じで、雰囲気のある音作りがなされていると思う。
オリジナル盤のレコーディング・エンジニアはケン・スコット

リマスターCDはアナログと比較するとやはりハイ・ファイな音だ。
ギターの音もアンプを新しいものに替えたような鮮度のいい音だし、ハイハットなどの高域もよく伸びている。
そのわりにはノイズが少ないのも驚異的で、曲間のヒス・ノイズもほとんど聞こえないほどだ。
ヴォーカルはアナログに比べるとぐっと前に張り出して、ロッドとベックの2大スターの競演というイメージを演出する。
けっきょくどちらがいいというより好みの問題なのではないだろうか。
ただ、CDではタンバリンがやや歪んで聞こえるのが気になった。
まあ、でもじつをいうと、このアルバムを聴き始めると思わず引き込まれてしまって音質を云々できなくなってしまうというのが 正直なところ。
それほどぼくはこのころのジェフ・ベックが好きなのだ。

ということで、音はじゅうぶんだと思うのだが、紙ジャケにはいろいろ不満が残る。
ぼくらがほんとうの『真実』を手に入れるのはまだまだ先なのかナーン(Prodigalさん風…)。

special thanks to MASA
© 2004-5 ryo_parlophone




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