BEATLESのアナログ盤

トップ・ページに戻る

LET IT BE

例によって私事から入らせていただきます。
1970年4月ぼくは高校生になっていました。 そのころの気分をひと言で表すなら、やはり「政治の季節」ということばがふさわしいと思います。
多くの労働者や学生たちのあいだにはベトナム反戦や70年安保闘争という重たい課題があって、 一方高校では三無主義(無気力・無関心・無感動)なんてことばがぼくたちに突きつけられたりしていました。

ちょうどそのころ、ポールが「ビートルズを脱退した」と宣言したのです。
うすうすとはわかっていました。 けれども新聞でその記事を読んだとき、やはりすごくショックでした。
とうとう来るべきときがやって来た……そんな感じでした。
そしてそれは次第にビートルズの解散という報道になっていきました。

5月になってリリースされたラスト・アルバム『レット・イット・ビー』は、かずかずの名曲が含まれているものの、 全体的には「栄光のラスト・アルバム」というにはあまりにも散漫な内容で、 あとで劇場公開された映画『レット・イット・ビー』を見て、 解散するのもしょうがなかったんだなあ、と妙に納得してしまいました。
映画のなかでは「オー・ダーリン」や「Maxwell's Silver Hammer」など、『アビイ・ロード』収録曲を演奏するシーンや、 ハイライトであるルーフトップ・コンサートの場面が強く印象に残りました。 とくに「ドント・レット・ミー・ダウン」のジョンの熱唱は胸に迫るものがありました。
またジョンがラップ・スティールを弾くようすもおもしろく、よくギターを横にしてまねしたりしてました。
ギター仲間でジョン大好きの友人なんかは「ゲット・バック」でジョンがリードを弾いていたのを、まるで自分のことみたいに 威張ってたっけ。……懐かしいなあ。

映画とレコードの真相にまつわるさまざまな情報が伝わってくるのは、まだまだ先のことでした。

さて、ではまずUKオリジナル盤からご紹介していきましょう。




197058日発売のボックス・セットで、カタログ・ナンバーはPSX 1。 ステレオ盤のみのリリースです。
外箱は裏表ともコーティングされたたいへん上品なもので、レコード・ジャケットと同じデザインですが、 ボックスの表にタイトルは記載されていません。
裏側の一番下にクレジットがあり、デザインはジョン・コッシュ、カメラはイーサン・A・ラッセル ボックスほかの製作はGarrod & Lofthouse社と記されています。






内箱は左右に大きな耳がついていて、その中にトレイに収められた写真集が入っています。
外箱の左右にあたるところが空いているので、横にずらす感じで内箱を押し出すかっこうになります。
右側の画像は写真集を取り出したところ。内箱とトレイです。
外箱もそうなんですが、特にトレイはたいへんに紙質が薄いために傷みやすく、なかなか美品はありません。 ぼくが持っているものも、裏からセロテープで補修がしてあります。

写真集です。タイトルは『THE BEATLES GET BACK』。




そうです、ポールが「原点に返ろう」と呼びかけて、紆余曲折の挙句、未完のまま放り出された幻の12枚めのオリジナル・アルバムの タイトルのままです。
表紙はやはりヴィニール・コーティングが施してあります。
164ページに及ぶ写真集は糊付けが十分ではなく、ぱらぱらと落丁してしまうものが多いようです。



上の写真は7ページのクレジット。『レコード・コレクターズ』誌2003年12月号の「『レット・イット・ビー』 オリジナル・アルバムのトリヴィア」によると、ぼくの持っているのは第3版のようです(涙)。



ギブソンのJ-200を弾くジョンの姿や、マーティンのD-28を弾くポール、その後で退屈そうな(?)リンゴ。
ジョンとヨーコがいちゃつくようすも写っています。

さて、写真集の入ったトレイを持ち上げると、その下にレコードが収められています。




ボックス・セットのカタログ・ナンバーはPSX 1ですが、レコードには固有の番号があり、PCS 7096となっています。
表裏ともヴィニール・コーティングの美しいラミネートのシングル・ジャケットです。
フロント・カヴァーの4人の写真は外箱の写真とは微妙に色味が違っています。 バック・カヴァーの下方にあるアップルのマークはなぜか赤リンゴ。




レーベルはダーク・グリーン・アップルで、マトリクス・ナンバーはYEX 773-2U/YEX 774-2U。 スタンパー関係はSide-1が16 /LA、Side-2が6 /GDLとなっています。
白いプレーンなインナーは左下に「PATENT NO.1,125,555.」、右下に「MADE IN ENGLAND」というクレジットが入っています。
なお、『LET IT BE』に限ってはファースト・プレスのブラック・インナーが存在しないようです。

つづいて約半年後の70116日にリリースされたUK盤2ndプレスです。




コーティング・カヴァーのシングル・ジャケットでレコード番号もやはりPCS 7096ですが、 裏ジャケットのリンゴのマークがグリーン〜レッドの微妙なグラデーションになっています。




レーベルはライト・グリーン・アップルで、マトリクスはYEX 773-2U/YEX 773-3U。 Side-1にはマザー・ナンバーの刻印がなくスタンパー・コードはTM、Side-2は2 /RRDです。
インナーは白の無地ですが、右下のクレジットが「MADE IN GREAT BRITAIN」になっています。

ではつづいてUS盤を見てみましょう。




UK盤と同じく58日に発売されたUS盤は、BOXセットがリリースされなかった代わりに、何枚かの写真をあしらった ゲイトフォールド・カヴァーになりました。US盤としてはおなじみの、コーティングのない厚紙ジャケット。 レコード番号はAR 34001です。
US盤『レット・イット・ビー』はなぜかカウンターフィットがたくさん出回っているので有名ですが、 オリジナル盤は写真がかなり高品位で印刷されており、割と簡単に見分けることができます。
フロント・カヴァーはUK盤と同一ですが、バック・カヴァーには細かな違いがいくつかあります。
まず目につくのは、UK盤にはあった4人の写真の白い縁取りが、US盤ではなくなっていることです。
クレジット関係では、まずプロデューサー、フィル・スペクターの記載が、 UK盤では「Phil Spector」となっているのに、US盤では「PHIL SPECTOR」とすべて大文字になっています。 写真の下の「Thanks to〜」の部分に、UK盤にはない「Harold Seider」氏の名前が加えられています(って、だれ?)。
リンゴのマークはUKファースト・プレスと同じ赤リンゴですが、その下のレコード会社のクレジットの部分に 「An abkco managed company」の名が追加されています。
アラン・クライン率いるアブコって、ストーンズの音源をすべてUS盤で統一したり、どうも個人的には好きになれません。

ゲイトフォールド・ジャケットの内側です。



左の写真を見ると、映画『レット・イット・ビー』冒頭の、トゥイッケナム・フィルムスタジオの寒々としたシーンが 蘇ってきて、なんとも複雑な気持ちになります。




US盤はレーベルも赤リンゴ。マトリクスはJS17500-22、JS17501-12。白のプレーンなインナーがついています。
US盤のレーベルにはA面B面ともに、「Reproduced for disc by PHIL SPECTOR」というクレジットが入っています。
上記『レココレ』の「トリヴィア」によると、ファースト・プレスはSide-1最後の「Maggie Mae」の作曲者のクレジットが 「P.D. arr. Lennon; McCartney; Harrison; Starky」になっているそうで、ぼくが持っているディスクのように単に 「P.D.」と記載されているのは、ファースト・プレスではないそうです(またしても涙)。




Side-1、2両面とも「Phil+Ronnie」の手書きのサインと、(写りがよくありませんが)「Bell Sound」の刻印、 手書きで sf のサインとアンテナのようなマークがあります。
このマークはキャピトル・レコードのウィンチェスター工場でプレスされたレコードに付けられるマークですから、 レコード会社はアブコになってもキャピトルでプレスされたのかもしれません。

ではつづいて、約1か月遅れてリリースされた国内盤です。
国内盤もファースト・プレスは英国盤と同じボックス・セットで、7065日のリリースでした。
ぼくは持っていないので写真をお見せすることができませんが、丸帯つきでレコード番号がAP-9009である以外は、 基本的にUK盤と同じです。レコードのジャケットはシングルですが、コーティングはありません。
数は少ないと思われますが、赤盤が存在し、丸帯・赤盤のボックス・セットは、ときどきとんでもない値段で取引されたりしています。

ご覧いただくのはセカンド・プレスで、リリースは71225日。 レコード番号はAP-80189に変更になっています。
映画『レット・イット・ビー』が第43回アカデミー賞主題歌賞を受賞したので、 それを表す金色の細い帯が、丸帯といっしょについています。




1stプレスは英国仕様だったのに、2ndプレスから米国仕様になるのもなんだかよく分かりませんが、コーティングのない 厚紙ジャケットで、ゲイトフォールド・カヴァーになっています。
フロント・カヴァーや内側の写真はUS盤に比べるとかなり品位が落ちます。
バック・カヴァーのデザインやクレジットはUK盤と同じで、フィル・スペクターの表記は「Phil Spector」になり、 「Harold Seider」氏の名前はありません(だれ?)。




レコードはエヴァークリーン・シリーズの赤盤で、レーベルはグリーン・アップル、おなじみの黒いインナーがついています。

では最後にモービル・フィディリティ盤をご紹介しましょう。
リリースは19877月で、レコード番号はMFSL 1-109




ジャケットはUS盤と同じ構成のゲイトフォールド・ジャケットで、 ラミネート・コーティングではありませんが光沢のある大変美しいもの。
残念ながら4人の写真は国内盤よりさらに品質の劣るものできれいではありません。
裏ジャケットはUK盤に準じていますが、赤リンゴのほかにモービル・フィディリティのロゴマークと なぜかパーロフォンのマークまでついています。




おなじみホワイト・レーベルで、上部にブラウンの「ORIGINAL MASTER RECORDING」のロゴ入り、 中央右にはEMIのマークがあります。
厚手の保護紙はブルーのCDの広告も入った、後期タイプです。


音質評価については、別稿 モービル・フィディリティ・サウンド・インプレッションをご覧ください。




© 2004 ryo parlophone




BEATLESのアナログ盤 メイン・ページに戻る

トップ・ページに戻る




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送