紙ジャケCDの誘惑


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Chapter 14 "James Taylor"


original : apple (stereo) SAPCOR 3, Dec.6, 1968
paper sleeve : TOSHIBA-EMI TOCP-67569, June 22,2005

ぼくがいちばん最初に聞いたジェイムズ・テイラーの曲は何だったろう。
最大のヒットはキャロル・キングのカヴァー「きみの友だち」だが、その前にラジオから流れてきた 「ファイヤー・アンド・レイン」を初めて聴いたとき、その繊細なメロディと歌に 訳もなくこころがざわめいたのを覚えている。
……なんて書ければかっこいいのだが、やっぱり最初は「きみの友だち」だろうな(笑)。
そのあと「ファイヤー・アンド・レイン」を聴いてジェイムズ・テイラーのアルバムを買いたくなった、 というのがおそらくはほんとだと思う。

ジェイムズのアルバムでは、初期の『スウィート・ベイビー・ジェイムズ』、『マッド・スライド・スリム』、 『ワン・マン・ドッグ』の3枚が好きだが、デビュー・アルバムである『ジェイムズ・テイラー』は なかなか手に入らなかった。
CDにしても国内盤は長らく廃盤の状態が続いていたように思う。
ジョージ・ハリスンのビートルズ時代の最大ヒット「サムシング」の歌詞の出だしは ジェイムズのアルバム収録曲から取られた、と聞いてもなかなかその曲を耳にすることはできなかった。
それが今回紙ジャケで復刻されたのだから、こんなにうれしいことはない。




さて、左がUKオリジナル盤、右が今回の紙ジャケである。
顔の陰影などを見るとやや復刻の質は低いようだが、色合いはまずまずである。
ぱっとみてタイトルのレタリングの色の違いに目がいくが、わが国ではファースト・プレスはブラック・レタリングだと 言われてきた。
ところが、どうも真相はUK初盤はオレンジ・レタリングであり、ブラック・レタリングはUS初盤ということで落ち着きそうだ。
しかし不確定要素もあるので、なにかご存知の方がいらっしゃったら掲示板などに書き込んでいただけると 幸いである。

さて、まずアナログ盤を見ていこう。



豪華なゲイトフォールド・カヴァーで外側はヴィニール・コーティングが施されている。

内側はコーティングがなく、おそらくジェイムズの直筆と思われる歌詞が掲載されている。



レコードはビートルズの『フォー・セール』などと同様内側から取り出す形式になっている。
白いプレーン・タイプのインナーに収められている。



つづいてCDをご覧いただこう。



アナログ盤を忠実に復刻した形で、外側にヴィニール・コーティングを施したゲイトフォールド・カヴァー、 内側はコーティングがなく、ぺらぺらのいわゆるE式のジャケットになっている。
画像の右側が光を反射しているのは、コーティングの折り返しがあるからだ。



もちろんCDは内側から出し入れするタイプになっている。
一昔前ならこんな消費者から苦情がくるような形式にはぜったいならなかっただろう。
紙ジャケ文化もここまできたということか。
感慨深いなあ〜。




折り返しのクレジット部分を見る。
フリップバックの幅がCDの方が広くなるのは、強度の点から仕方ないのかもしれない。
それ以外は忠実に復刻されている。

Apple マークのあたりもハイ、このとおり。



アナログ盤は上端の部分がヴィニール・コーティングのせいだろう、薄く変色しているが、 だとしたら紙ジャケも何年か経てばこんなふうに変色するのだろうか。
それはそれで風格みたいなものが出て、かっこいいかなあ(笑)。

レコードを収めるポケットの部分。
アナログ盤のジャケットにはこんなところにスリーヴ製作会社のクレジットがありました(笑)。
さすがにこれは復刻されていない。
オリジナル盤のスパインの部分には上下に絞りがあるが、紙ジャケもちゃんと絞ってある。

レーベル面はあいかわらずだ。
メアリー・ホプキンのポスト・カードのときに東芝EMIが悪いように書いてしまったが、 本家EMIリリースのCDもこんなレーベルのようだから、どうしようもないのかもしれない。




オリジナル盤はダーク・グリーン・アップルで、スピンドル・ホールの上には Sold in U.K.〜という再販価格に関するリマークがある。
『ホワイト・アルバム』の1stプレスと同じで、左側の回転数を表す33 1/3 の上に An E.M.I. Recordingという表記はない。
CDのほうはほとんど色の抜けた「へなちょこ・ライト・アップル」である。

最後に音の比較をしておこう。
ジェイムズの音楽はこのころからすでに完成されていて、繊細さのなかにブルーズ・フィーリングもあり ソウルフルな部分もあって、今聴いてもまったく古さを感じさせない。
それに比べるとアナログ盤は、帯域を欲張らずに中域を充実させた、一聴やや古さを感じさせる音作りだ。
とくにピーター・アッシャーのアレンジはハープやチェンバロなどを多用したもので、 そのナローなレンジ感が古さを強調するような部分がある。
しかしじっくり聞き込むと、ジェイムズのヴォーカルはリアルでじつに存在感があるし、ちょっと鼻が詰まったような 独特の音色が特徴のGibson J-50 もよく特徴が出ている。
A-2ではオーボエがスピーカーの外にまで広がってステレオ感を強調するのも微笑ましい。
ちなみにマトリクスはSide-1がSAPCOR 3A-1、Side-2が3B-1である。
一方CDの方は91年のリマスタリングとは思えないSN比のよさが印象的で、 アナログに比べると帯域も伸びている(ように聞こえる)。
ただヴォーカルの口がやや大きくなる傾向があるのと、アナログに比べると低域が軽くなってしまい、 それに伴って音楽の躍動感が少し乏しく感じられるのが残念なところだ。

© 2005 ryo_parlophone




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